大会でのサプライ準備方法について

今年の日本選手権では、予選は構築済みサプライでしたが、本選はランダム、準決勝以降はドラフトでサプライを準備していました。
本選のランダムと準決勝以降のドラフトでのサプライ準備について、何となく思うところがあったので書いてみます。
今後、ドミニオンの大会を開催(運営)する方のご参考になったらと思います。

【ランダム・サプライについて】
繁栄を除く全カードからのランダムでした。
繁栄が除かれたのは、単純に運営のミスで繁栄の数が揃わなかったためで、日本選手権としては微妙な感じですが、一般の大会であれば、「準備できるセットの範囲内で行う」というのは仕方ない事かなと思います。
今回の日本選手権本選では使用するセットをすべて混ぜた全体からのランダムでしたが、運営の好みによっては、セット毎に枚数を決めたランダム(例えば「基本セットから2種類、残りの全セットから1種類ずつ」とか)というのもありかもしれません。

今回の日本選手権本選で問題に思ったのが属州・植民地場と屋敷・避難所場の選択基準についてでした。
「1種類でも繁栄のカードがあれば植民地場、1種類でも暗黒時代のカードがあれば避難所場」(1種類もない場合は属州場、屋敷場)という基準が適用されていました。
ありていに言うと、植民地場や避難所場になる確率が高すぎるように思います。

プロモを除いた200種類からランダムに10種類抜いた場合、35種類の暗黒時代が1種類以上ある確率は86%、25種類の繁栄が1種類以上ある確率は75%となります。
属州・屋敷場になる確率(サプライの10種類すべてが繁栄・暗黒以外のカード140種類から選ばれる)は3%を切ります。
今回は繁栄が抜かれたので植民地場にはなりようがありませんが、その分避難所場になる確率が少し高くなっており(約9割)、実際に本選4回戦はすべて避難所場となりました。

繁栄や暗黒時代に焦点を絞ったサプライや大会ならともかく、全カードからのランダムからなら、基本的に属州・屋敷場がメインで、たまに味付け的に植民地場や避難所場が出た方がいいような気がします。

やはりマニュアルにもある「1個目のピックが繁栄のカードなら植民地場、最後(10個目)のピックが暗黒時代なら避難所場」というのが、妥当な気がします。
ただ、これだと植民地場は8回に1回、避難所場も5〜6回に1回しか出ないため少ないと感じるかもしれません。

修正案として「最初の2個のピックに繁栄のカードが1種類でもあれば植民地場、暗黒時代のカードが1種類でもあれば避難所場」というくらいでいいかもしれません。
これなら植民地場になる確率が23%、避難所場になる確率が32%になります。
ちなみに、最初の3個のピックまで拡大すると植民地場33%、避難所場44%となります。

もしくは、サプライにピックしたカードに関係なく、ダイスなどで決める方法もありかもしれません(例えば6面ダイスを2回振って、最初の目で1が出たら植民地場、2回目で1が出たら避難所場とか)。
セット毎の枚数を決めたランダムの場合は、この方法にするか、決定した10枚から更にランダムにピックして、ピックされたカードのセットの種類で決めるといった方法になるのでしょうか。

もちろん、主催者や参加者の好みで決めればよい話なので、「参加者みんな植民地場大好き」みたいな場なら、全部植民地場でやればいいのではという話になりますが。

【ドラフト・サプライについて】
詳細はこちらを確認してもらうとして、準決勝以降のドラフトのやり方を簡単にまとめると、

1)手番順が決まった状態でドラフトを始める。基本からギルドまでの9つのセットのランダマイザーをセット毎に分け、各参加者にそれぞれのセットからランダムに1種類ずつ裏向きに配る。
2)3番手→4番手→1番手→2番手→3番手→4番手→1番手→2番手→3番手→4番手の順番に、配られた9枚のランダマイザーから1枚を場に表向きに出す。4番手のプレイヤーが10枚目を出した時点で、場に出された10種類のカードを今回のサプライとして1番手からプレイする。繁栄のカードが3種類以上あれば植民地場、暗黒時代のカードが3種類以上あれば避難所場、それ以外の場合は属州場、屋敷場となる

といった感じです。

元々、私の意見としては「ドミニオン自体がドラフトでサプライを決めるにはあまり適していない」と思っています。
MtGのドラフトのように「ピックしたカードは自分しか使えない」のではなく、「全員が使うサプライに供される」ことになるため、「いわゆる強いカード」を選ぶのが自分の勝利につながるわけではなく、「今回の自分の手番で有利になるカード」かどうかが問題になります。その次に「自分が(プレイするのが)得意なカードか?」といったあたりが来ることになります。
そのため、ちょっとやりこむと、似たようなサプライになる可能性が高いような気がします。

何か、新しい展開を求めるのであれば、「8種類くらいランダムで用意して、9種類目と10種類目に関しては3番手と4番手が手札として配られたランダマイザーから1種類ずつ足す」くらいで良かったのではないかと思います。

また、本選とは逆に、植民地場、避難所場になる条件が厳しいような気がします。
4人のプレイヤーに1枚ずつ配られた繁栄(暗黒時代)のカードのうち3枚が場に出る、つまり3人が繁栄のカードを出さない限り植民地場(避難所場)になりません。
単純にサプライ選択上の問題としても繁栄のカードが3枚出るかというと難しいですが、2人が繁栄のカードを出しても、残る2人に植民地場を拒否する心があると植民地場になりません。これが1枚や2枚となると、逆に植民地場や避難所場になりやすいという問題になりそうな気がします。
10種類のサプライが決まった時点で、その10枚のランダマイザーをシャッフルしてランダムに2枚めくって、繁栄のカードや暗黒時代のカードがあるかで判定する方式で良かったのではないかという気がします。
ある程度ランダム性を持たせないと、「植民地場になる・ならない」だけを焦点に「繁栄のカードが出される・出さない」の判断が下されるのも、ちょっとどうかなという気がします。

あと決勝戦の勝利条件が「1位を2回取ること」であるため、2位以下にまったく意味がなくなっています。
ドミニオンは本来1位を目指すゲームだから」と言われればそれまでですが、逆にこのレギュレーションだと、2勝目を挙げそうなプレイヤーが出た場合、その回の自分の1位を放棄しても別のプレイヤーに1位を取らせるプレイが容認されることになります。
例えば、1位を妨害するためだけに泥棒や密偵のようなアタック・カードを取った上で、1位以外は優遇する(泥棒で金貨・銅貨がめくれたら、2勝目を挙げそうなプレイヤーからは金貨を取るけど、追い上げている現在0勝の2位プレイヤーからは銅貨を抜く)とか、それこそ仮面舞踏会で属州をまわすような直接的なプレイもアリになるような気がします。
そう考えると、あと時間管理の関係から考えても、4回戦とか決めて順位点合計で決める方がいいような気がします。
実は準決勝が1発勝負なのも、時間の関係上仕方ないのもわかりますが、私はあんまり好きでないところがあります。本選をもう1戦増やして上位4名で決勝でいいように思います。そうすると逆に、途中で既に決勝に届かないことが判明しているプレイヤーの数が増えるので、そのプレイヤー達のモチベーションという問題が生じるわけですが。

また実際の決勝戦を観戦して思ったのですが、「普段のプレイ(練習)やミニ・トーナメントみたいな大会とかなり違うレギュレーションになるため、参加しているプレイヤーの理解が及んでいない」というのを感じました。
木ドミの上位の方には事前にこのレギュレーションで遊んでみたりした方もいたみたいですが、ほとんどの人は予選の「基本−ギルド」環境の練習で手一杯で、自分が決勝まで残るだろうと思ってこのレギュレーションで練習したりはしていなかったと思います。
決勝に残るレベルのプレイヤーならば終わった後に思い返して考えてみればわかることだと思いますが、ほぼ初見のレギュレーションだったせいか(実際に準決勝が始まるまで、準決勝の詳しいレギュレーションを知らない方もいたみたいです)、微妙な選択が多かったように思います。
まぁ、ああいった大舞台で普段通りのプレイが出来るかといった話もあったのでしょうが。

あと、ゲーム開始時に「シャッフルして左手の人に渡し、右手の人から受け取ったデックをそのまま使ってプレイする」というのも、個人的にはすっきりしませんでした。「全員「銅貨×7、屋敷×3」をシャッフルしたものだから条件は同じ」ということで、理屈上は正しいのですが。そもそも自分で十分シャッフルしていれば他人にシャッフルしてもらう必要性は理屈上ないわけですが、大会で他プレイヤーのシャッフルやカットを受けるのは不正防止のためになります。この方式だと、右手のプレイヤーが5-2が不利な場で5-2を仕込んで渡してきても、防止策がないことになります。実際、そんな心配する必要はないのでしょうが、何となくすっきりしません。

いろいろとネガティブな意見が多くなりましたが、それでも事前に公開されたルールに則って試合は執り行われたわけで、「最後に勝利をつかんだプレイヤーが最も強いドミニオン・プレイヤー」とうことには異論はありません。
ルネさん、おめでとうございました。

また、どんなに頑張ってレギュレーションを考えても、だいたい不満に思う人は出てくるわけで(例えば植民地場が多くても、少なくても不満に思う人は出てくるわけで)、大会の運営に関しては良好だったのではないかと思います。
ホビー・ジャパンのスタッフの方々、及び大会に関係した方々にも深く感謝したいと思います。
願わくば、来年も日本選手権が開催されればと思います。
その場合、予選は「基本+陰謀+海辺」くらいからの出題がいいような気がします(錬金術、繁栄あたりでドミニオンを辞めた人は多いような気がするので)。

ではでは。