井戸はどんな願いを叶えてくれるのか?(2)

「願いの井戸」の有効性の検討として、前回は、初手「願いの井戸」と男爵の組み合わせについて、倉庫や銀貨の場合と比較して検討してみました。

その結果、「願いの井戸」の役割については、【薬師(偵察員、地図職人)とのコンボ】【同一カードたくさん(銀貨とか)デック】【幽霊船へのカウンター(言われている程、有効ではありませんが)】などで使う以外に、『初手で購入して、デックの(2周目の)運用を安定する』というのもあるのでは、という結論に至りました。

今回はその結論の補強として、初手「ポーション(P)−願いの井戸」の場合について検討してみました。
結論を先に述べると、使い魔のような「P+3」コストのカードを目指す場合、初手「ポーション−願いの井戸」は良い組み合わせであると言えるかと思います。


さて、初手「P−願いの井戸」と比較対象の「P−銀貨」の2周目(3〜4ターン)の詳細ですが、の通りです。
以後、「開始前のシャッフルから次のシャッフルまでの間(1〜2ターン、いわゆる初手)」を1周目、「初手を買った後のシャッフルと次のシャッフルの間」を2周目(3〜4ターン)とします。

「P−銀貨」の場合、2周目に「P+3」コスト(使い魔)を買える確率は65%となります。
対して「P−願いの井戸」の場合、73%となります。
確率自体は驚くほどアップしているわけではありませんが、上記確率の改善にプラスして、願いの井戸の場合は約1.5枚分の+ドローによる回転率アップという特典があります。
前回の「男爵−願いの井戸」の検討から考えても、予想内の結果と言えます。

「2周目(3〜4ターン目)にポーションを引いた場合」という条件付確率だと、「P−銀貨」で「P+3」以上となる確率は78%、「P−願いの井戸」の場合は75%となり、かなり数値が近くなります。ただし、これは「P−銀貨」の場合は2周目にポーションが底に沈む確率が17%(12枚中2枚)あるのに対して、「P−願いの井戸」は3%しか底に沈む確率がない点が等閑にされているところがあるため、比較してもしょうがないところがあります。

コインの出力自体は「P−願いの井戸」より「P−銀貨」の方が良くなりますが、流石に「P−銀貨」スタートであっても2周目の2ターン(3ターン目と4ターン目)に、それぞれ「P+3」と「6コイン」の組み合わせのコイン出力が出ることはかなり稀となります。「P+3」と「3コイン」以上の組み合わせとなると、やはり「P−願いの井戸」の方が、確率が良くなります。

また、「P+2」コストのあるサプライだと、「P−銀貨」で2周目に「P+2」コスト以上が出る確率は82%に対して、「P−願いの井戸」の場合96%となり、ここでも「P−願いの井戸」初手の優位性が見えます。
「P+2」コスト以上の検討の場合、2周目にポーションを引いた場合の条件付確率だと、「P−銀貨」で98%、「P−願いの井戸」で99%の確率で「P+2」コスト以上が出ることからも、2周目に「P+2」コストのカードが買えないのは、殆どの場合、ポーションが底に沈んだ場合(「P−銀貨」で17%、「P−願いの井戸」で3%)であることが分かります。
・・・私はIsoで2周目に「ポーション、銅貨、屋敷×3」という手札を引いて愕然とした記憶が何度もあるので、何となく納得できないところもありますが。

これらの結果や、前回の考察から考えると、『願いの井戸』は、【初手に買って】【2周目の結果を安定させるのに役立つカード】といっていいかと思います。
今までそういうイメージは全くありませんでしたが、もしかすると(薬師などのコンボなどよりも)こちらの方が「願いの井戸」の本来の使い方なのかもしれません。

実はここで、「結果を安定させる」というところがミソで、例えば2周目に単純に手札のコインの出力だけで6金を出そう(金貨購入しよう)と思うと、初手に願いの井戸を買うより、銀貨を買った方が良くなります。
「銀貨×2」と「願いの井戸−銀貨」を比較すると、初手「願いの井戸−銀貨」の方が結果は安定しますが(ばらつきなく、同じくらいの結果が出る)、「出力:6金」に届かないレベルで安定するので(平均4.4コイン)、6金出る確率はかなり低くなります(29%)。
「銀貨×2」の場合は、平均は4.6コインとそれ程変わりませんが、そこからのばらつきが大きいので、6金出る確率は42%と、初手「願いの井戸−銀貨」に比べると結構高くなります。
そのため、単純にコインだけで「2周目に6金」を出すことを目指すなら、「銀貨×2」の方が、可能性としては高いです。
そのため、初手・願いの井戸が効力を発揮するのは「特定の組み合わせで強力な効果を発揮する」場合になります。

つまり、今回検討した「P+3(使い魔など)」のあるサプライで、初手ポーションから入って2周目に「P+2」止まりだったり、初手男爵から入って2周目に男爵がニート化したりして、“泣き濡れる”(運よく揃った人に対して後手を引いて、そのままズルズル敗北する)という結果を回避するためのカードといえるかと思います。

2周目に「願いの井戸」の効力が強まるのは、初手(1〜2ターン)にカードを2枚を買った後の2周目の山札が【12枚】という点が大きいのかなと思います。
4ターン目に「願いの井戸」を使用すると「必中」となります(山札の最後の1枚をコールすることになるため)。
もしかして、「願いの井戸」でコールするのが山札の2枚目(1枚目は井戸のキャントリップで引いてしまう)というデザインなのは、この「4ターン目必中」にするためではないかと勘ぐってしまいます。
なんらかのギミック(例えば真珠採りとか、見張りとか)と組み合わせる場合、山札の2枚目に比べて1枚目の方が確認する方が方法も多いし、簡単なことが多いのですが、こと何も手を加えない場合の3〜4ターン目に限っていうと、2枚目をコールする方が分がよくなります(3ターン目の場合も、キャントリップの1枚分情報量が増えるので、有利に働くことが多いはず)。
まぁ、1枚目を確認する効果だったら、予想より使えるカードになってしまうからバランスを取ってこのデザインなのかもしれませんが。
しかし、こうやって考えていくと、思った以上にドミニオンのカードの内容は練られているのかなと思う時があります。

逆に3周目以降の願いの井戸のヒット率は、2周目に比べるとかなり低くなります。
2周目に「悲劇」(「男爵のニート化」、「P+2金止まり」など)を避けて役割を果たした後、つまり3周目以降は「既に役割を果たして、あとはキャントリップだから邪魔にはならないし、たまにヒットして+αがある」という位置づけになるような気がします。
そう考えると、(何らかのコンボなどで理由のあるサプライや、鉄工所で他に取れるキャントリップがないなどの場合を除くと)願いの井戸はあまり初手以外には買うものではないのかもしれません。

ポーション・カード(使い魔に限らずP+2の大学や薬師なども含む)の場合、2周目に目当てのポーション・カードを買えることが第一目標になるので、願いの井戸は初手のポーション購入の相方として適したカードになるかと思います。
こういったポーションや男爵の他にも、銅細工師スタートも候補になると思います。
また、サプライにもよりますが、引揚水夫や改築、開発、再建といったカードとの併用(屋敷と揃って引くため)も考えられるのかなと思います(2周目に購入したいカードに必要なコイン量によっては願いの井戸より、通常の銀貨との併用の方がいい場合も多そうですが)。
多少コイン出力が落ちても「礼拝堂が底に沈まなければ、この面子なら勝てる」といった読みの場合の礼拝堂(「研究所−礼拝堂」初手の劣化版として)とかも考えられるかなと思います。

また、こういった観点から推奨セットを眺めなおしてみると、昔は考えもしませんでしたが、結構、願いの井戸の観点も組み込んでサプライが組まれているようにも見えます(偵察員や薬師コンボがあるか、銅細工師や男爵と組み合わせたサプライになっています)。

陰謀推奨セット:願い(中庭、仮面舞踏会、貧民街、執事、願いの井戸、銅細工師、偵察員、拷問人、交易場、改良)
錬金術推奨セット:プールとツールとフール(願いの井戸、男爵、鉄工所、銅細工師、交易場、弟子、貴族、薬師、念視の泉、ゴーレム)
繁栄推奨セット:ラッキーセブン(詐欺師、願いの井戸、橋、銅細工師、貢物、保管庫、拡張、宮廷、銀行、鍛造)
収穫祭推奨セット:刺激的人生(中庭、大広間、鉱山の村、銅細工師、再建、馬上槍試合、魔女娘、貢物、豊穣の角笛、品評会+(災い)願いの井戸)
暗黒時代推奨セット:予言(浮浪者、大広間、願いの井戸、共謀者、男爵、金物商、武器庫、建て直し、秘術師、貴族)

ではでは。