井戸はどんな願いを叶えてくれるのか?

「願いの井戸」(3コスト:陰謀)は評価するのが難しいカードだと思います。
私も、大昔にはネタ・カード扱いしていたことがあります。今となっては、その頃の不明を恥じるばかりですが、かといって「強力なカード」というわけでもなく、今でも「その効果の程を測りがたい」カードといった感じはあります。
薬師などの明確なコンボ対象がある場合は置いておいて、それ以外のサプライにおいて、「どれ位のライブラリー操作能力があるのか?」、「初手に買うのが妥当なカードなのか?」といった疑問は、未だに晴れません。

そこで、願いの井戸を検討する一環として「初手に男爵との組み合わせ」と、よく比較される「研究所や、単なるキャントリップ(村)との比較」について検討してみました。

以下、雑談含めて非常に長くなるので結論だけ先に述べると

・初手「男爵−願いの井戸」は、初手「男爵−倉庫」に匹敵する
・3〜4ターン目に5金でもいいなら(「どうしても6金」という状況でないなら)、「願いの井戸−銀貨(もしくは金貸しなど)」も十分初手の候補となる

となります。

検討内容の計算結果は別紙の通りとなります。

以下、詳細に移ります。
今回の検討では、以下の初手の組み合わせについて、検討しました。

「銀貨×2」「男爵−銀貨」「男爵−倉庫」「男爵−願いの井戸」
「研究所−銀貨」「願いの井戸−銀貨」「村−銀貨」

最初は男爵との組み合わせだけを検討していましたが、途中で願いの井戸の比較対象によく挙げられる研究所との比較も行ないたくなって、組み合わせを増やしました。

それぞれの意味合いは、
「銀貨×2」:通常のお金プレイの効果
「男爵−銀貨」:通常の男爵の効果
「男爵−倉庫」:比較対象として、男爵と組み合わせて効果的とされる初手の組み合わせでの効果
「願いの井戸−男爵」:今回検討したい対象

「願いの井戸−銀貨」:今回検討したい対象(初手「願いの井戸」の効果について)
「研究所−銀貨」:通常の初手としてはありえませんが、比較対象として
「村−銀貨」:キャントリップ<願いの井戸<研究所という位置づけで比較対象として

検討した内容は以下の通りとなります。
・ 3〜4ターンのいずれかに5コイン、6コイン、7コイン以上が出る確率
・ 3〜4ターンの1ターンあたりに出るコイン量の平均値
・ 3〜4ターン目に引くカードの枚数の合計(倉庫の場合「見るカード枚数−捨札にする分」で記載しています)
・ 男爵が底に沈む(3〜4ターンに引かない)確率
・ 男爵が3〜4ターンにニート化(男爵を引いた際に屋敷と一緒に引かない)する確率

なお、今回の検討では、外部の影響(アタック・カードなど)はないものとして計算しています。

「願いの井戸−男爵」で、3ターン目に願いの井戸でカード名をコールする場合、基本的には確率優先(当たる確率の高いカードをコールする、つまり殆どの場合“銅貨”となる)ですが、以下の場合のみ例外としました。
※ちなみに、4ターン目に使う場合は必中なので優先順位を決める必要はありません。

・ 男爵のみや、男爵なしで屋敷3枚を引いた場合(このままではニート化する場合)は、当たる確率無視で、ニート化回避を優先(屋敷や男爵をコール)する
・ 6金に届きそうな場合(コールする時点で銅貨5枚)も、確率無視で、6金を狙う(銅貨をコールする)

「願いの井戸−銀貨」の場合は、単純に確率優先で計算しています(村や研究所と比較して、どれだけ効率よくドローできるのかを把握したいため)。

倉庫をプレイした際の捨て札は、単純に算出されるコイン量が多くなるように捨てています。

初手「研究所−銀貨」の組み合わせは、通常の初手ではありえませんが(あるとすれば、他プレイヤーの初手「義賊」など)、3〜4ターン目の動作だけで言うと「堀−銀貨」でも同じと言えます(他にターミナル・アクションがないので)。
ただ、願いの井戸の特性が「当たれば研究所」「プレイ後にアクションが残る」にあるため、ここは雰囲気優先で、研究所としています。

さて、結果を見て驚くのが、「男爵−願いの井戸」は「男爵−倉庫」と比べて殆ど遜色が無い点でしょうか。

倉庫との組み合わせの場合、(男爵が)底に沈む場合と言うのは「山札の底2枚が男爵、倉庫の場合」のみで、圧巻の低確率(1/55の確率=1.5%)となります。
ただ、願いの井戸との組み合わせの3%も、かなり低い確率となります。

その理由ですが、願いの井戸の場合、4ターン目に引けば(5/12の確率)必中であること(山札の最後の1枚に対してコールするので、それが何か分かった状態でコールする)が大きいように思います。この場合、4ターン目に山札を引ききるので、底に沈みようがありません。

3ターン目に引いた場合、コールで外す確率が出てきますが、当たる確率はそれなりに高いです。3ターン目に井戸を引いた場合、当たることを最優先でコールする場合なら、常に50%以上の当たる確率があり、通算の当たる確率は64%となります。
当たれば4ターン目に山札を引ききりますし、外しても1枚はキャントリップで引いている分、底に沈むカードは通常の2枚でなく1枚になり、確率は低くなります。
3〜4ターン目に井戸を引いた場合、コールの平均ヒット率は8割を超えることになります。

この4ターン目に引けば必中(研究所として機能)、3ターン目でも約2/3でコールが当たるという点は、初手「願いの井戸」を考える上では大きなファクターのような気がします。
もちろん、3周目以降(5ターン目以降)は、コールが外れる確率が結構高くなりますが、最低でもキャントリップにはなるので、邪魔にはなりません。
コイン量的には初手銀貨には劣りますが、今回の男爵みたいな「組み合わせ」が大事なカードの場合は、ドロー能力でスタート・ダッシュの確率を上げるとともに、中盤以降は最低限キャントリップ(たまに研究所)なので、少なくとも邪魔にはならないといったあたりも、初手「願いの井戸」の効果を考える上でポイントになりそうな気がします。
もちろん研究所より劣るのは明らかですが、代わりに3コインであるため、初手で3〜4コインのカードと組み合わせて買うことが可能です。

井戸にしろ倉庫にしろ、自身が底に沈んだ場合は3〜4ターンにライブラリー操作は出来なくなりますが、底の1枚が井戸(倉庫)で確定するため、残りの1枚に男爵が一緒に沈む確率はやはり低くなります。

その辺の効果があって、井戸の場合も底に沈む確率は3%と、かなり低くなります。
ちなみに、通常の「男爵−銀貨」の場合、1/6の確率(17%)となります。

また、ドローする枚数ですが、「男爵−願いの井戸」で3〜4ターン目の合計ドロー数の平均が11.4枚となり、「願いの井戸」の効果で1.4枚分増えていることがわかります(ニート化回避などせずに確率優先にすると、11.5枚まで増えます)。
例えば「研究所−銅貨」の場合の、3〜4ターン目の合計ドロー数平均の11.7枚(1/6の確率で研究所が底に沈むので、平均は12枚にはなりません)と比較すれば、3〜4ターン目の願いの井戸がかなり研究所として働いているのがわかります。
ちなみに、「村−銀貨」の場合は10.8枚になります。

6金以上出る確率で言うと、「男爵−倉庫」が88%に対して、「願いの井戸−男爵」は85%と、遜色のない結果になります。ちなみに、「銀貨×2」が42%、「男爵−銀貨」が57%となります。
構造的な問題ですが、7金以上出る確率は「願いの井戸−男爵」の方が圧倒的に高くなります(「男爵−倉庫」の場合、倉庫起動後の「男爵、屋敷、銅貨×2」の組み合わせが多くなるため)。
3〜4ターンの平均コイン量も「男爵−倉庫」が5.0金に対して、「願いの井戸−男爵」は5.1金とほぼ互角です。ちなみに、「男爵−銀貨」が4.8金、「銀貨×2」が4.6金になります。
かなりニッチな仮定ですが、もしも「宮廷、男爵、願いの井戸、倉庫」といったサプライに遭遇した場合は、宮廷との相性も含め、「男爵−願いの井戸」が「男爵−倉庫」を押さえて初手の第一候補になりそうです。
(あくまで初手の話で、2周目以降に3コインでの購入機会があった場合は倉庫が優先になりそうですが)

ドロー枚数(倉庫の場合、その後3枚捨てるので、アクセス枚数?)で言うと、「願いの井戸−男爵」が11.4枚に対して、「男爵−倉庫」は12.6枚(ただし、余分に引いた分は捨札にされるので、手札として使うのはプレイした倉庫含めて10枚になります)と、流石に差がつきます。
初手が「倉庫−男爵(銀貨)」だと、3ターン目、4ターン目に倉庫を連打出来る可能性があり(5%くらい)、その場合、3〜4ターン目で16枚のカードにアクセス出来ることになります(手札として使うのは、その内の10枚/しかもその内2枚はプレイした倉庫ですが)。

初手(1〜2ターン目)にパスなしでカードを購入した場合、2ターン目終了時の全体のカード枚数は12枚になります。
この検討の際にも思いましたが、初手に2枚ドロー・カードを買った場合(願いの井戸もほぼ2枚ドローとみなしていいと思います)、底に沈まない限り、4ターン目にきっかり山札を引ききることになります。
対して、初手に3枚ドローのカード(鍛冶屋や倉庫)を買った場合、(それらのカードが底に沈まない限り)4ターン目に1枚足りなくてシャッフルが入ることになり、その点で「ばらつき」が大きくなります。
平均コイン量で考えると「倉庫−銀貨」スタートは「銀貨×2」に大きく劣りますが、ばらつきとしては大きいので、以下のような引きもありえます。

・3ターン目:
 銀貨、銅貨×4を引いて、金貨を購入(捨札は金貨、銀貨、銅貨×4の6枚)
・4ターン目:
 倉庫を含む手札を引き、倉庫をプレイ
 1枚足りなくなって捨札をシャッフルして山札を作り、そこから金貨をドロー
 屋敷3枚を捨てて、「金貨、銅貨×3」の手札で金貨を購入
 ちなみに、残った山札5枚は「銀貨、銅貨×4」
・5ターン目:
 手札は「銀貨、銅貨×4」となるので、金貨を購入

3〜5ターン目に3ターン連続で金貨を購入できます。
6ターン目は「金貨×3、銀貨、銅貨×7、倉庫、屋敷×3」の山札から引いた5枚の手札でプレイすることになります。
「宰相−神の子」プレイに匹敵する強烈さです。

原因としては、4ターン目の倉庫プレイの時点で、「屋敷×3、銅貨×3」というデック全体で一番弱い部分が、次の山札にシャッフル・インされていないためと言えます(底に沈んだ場合と同じ扱い)。
鍛冶屋−銀貨でも、倉庫による捨札がないだけで(といっても捨札になるのは屋敷3枚なので、結果は同じですが)、同じことが起こりえますね。

男爵がニート化する確率は、「男爵−銀貨」が18%に対して、「男爵−倉庫」「願いの井戸−男爵」ともに11%となります。減りはするけど、底に沈む場合に比べると劇的に減るわけではないですね。

「願いの井戸」での結果がいいのは、男爵という特殊なカードとの組み合わせという点も大きいとは思いますが、他にも銅細工師などのような、序盤に「特定の手札の形でドローしたい」カードとの組み合わせでは威力を発揮するでしょう。
ドロー・カード以外であれば、キャントリップなので(アクションが減らない)、ターミナル・アクション(アクション消費アクション)とも安心して組み合わせることが出来ます。この辺は研究所と同じ特性と言えます。

ドロー効率という話で、「研究所−銀貨」「願いの井戸−銀貨」「村−銀貨」も計算していますが、やはり、初手ドロー系は3枚以上のドローでない限り、2周目(3〜4ターン目)のコイン量的には微妙な結果ですね。
コイン量の平均では、「研究所−銀貨」でも「銀貨×2」よりも低くなります。
ただし、6金到達率は低くなりますが、5金到達率は逆転している点、あと、1.7枚分の余分なドロー分の回転率の点を評価すると、どちらがいいかはサプライ次第になるでしょう。

「願いの井戸−銀貨」でも「研究所−銀貨」に近い結果になるため、3〜4ターン目に「5金/4金(3金)」で十分(5コストにいいカードがあるので、必ずしも6金でなくても即敗北ではない)なら、回転率込みで「銀貨×2」よりも「願いの井戸−銀貨」もありでしょうか。
3〜4ターンで5金出る確率は91%⇒90%とほぼ同等で、3〜4ターン通じたドロー枚数が平均で1.5枚ほど増えます。
もちろん、銀貨の部分を「金貸し」とか「民兵」に置き換えるのもありです(民兵系の場合、他プレイヤーの民兵でのディスカードの部分まで考えると、5金に達するかの話は面倒なことになりますが)。
逆に、「とりあえず2周目(3〜4ターン)に6金(金貨)」という場合は、井戸は避けたほうが良さそうという話になります。
まぁ、5ターン目以降(3周目以降)に、自分がどれくらい願いの井戸を当てることが出来そうか、というのもポイントになってきますが。

ちなみにでは、「研究所−銀貨」「願いの井戸−銀貨」の平均コイン量がどちらも4.4コインと同額になっていますが、これは小数点以下第2位を四捨五入している影響で、細かい数値を見ると「研究所−銀貨」の方が0.06コイン程高くなります。

こうやって検討してみると、「願いの井戸」というと薬師(偵察員、地図職人)とのコンボや、同一カードたくさん(銀貨とか)デック、幽霊船へのカウンターなどが使い道としてパッと上がってきますが、初手「願いの井戸」でも、結構、目はありそうなんだなという気がしてきました(常にあるとは言えませんが)。