基本に帰ろう (その4) 鍛冶屋ステロイド1

結構間があいてしまいました。忙しかったのもありますが、上手く考えがまとまらなかったというのもあります。
未だに拙い(というか、多分に観念論に走った)部分がありますが、ご寛恕願います。
今回は、「鍛冶屋ステロイド」(というより、お金プレイ+α、いわゆるステロイド系)の前段階として、ゲームの終了タイミングについて考察したいと思います。
鍛冶屋ステロイドに限定される話でなく、他のプレイ・タイプでも重要な話ですが、ステロイド系では特に重要な話になるので、ここで説明していきたいと思います。

さて、ドミニオンにおいては、ゲームの終了タイミング(がいつになるのか)は、全プレイヤーのプレイ(主にカードの購入、獲得)結果があわさった結果であり、ある意味、プレイヤー間のインタラクションの結果といっていいとと思います。
最後の1枚の属州を購入してゲームを終わらせることは、自分だけでなく、他のプレイヤーのゲームも終了させることになります。
例えばドミニオンが、「準備された王国セットについて、それぞれソリティアでプレイし、勝利点25点以上になるまでのターン数の少なさを競う」といったゲームだったら、他人の購入は自分に影響を与えないことになります。実際は、共通のサプライから購入していくため、他者の購入・獲得自体も、インタラクションとなります。

ゲームの終了タイミングは、全プレイヤーのプレイ(意向)があわさった結果として決まります。通常1人の努力でこのタイミングを大きくずらすことは難しいですが、3〜4人が同じ方向でプレイすれば、かなり変動します。
それこそ、全員が「ゲームを終わらせない」「カードを獲得(購入)するようなことをしない」ということで合意すれば、このゲームは100万ターン続けることも出来ます。
3人とか、それこそ4人全員が早めに勝利点(たまに低コストのカード)を買い漁るような展開であれば、ゲームはかなり速く終了するでしょう。3人がそういったプレイをしている中で、一人だけじっくりデックを構築していれば、多分、負けるでしょう。
逆に、3人がじっくりデックを構築している中で、一人だけ、勝利点や低コストのカードを買いあさるプレイをしていれば、多分、中盤、終盤に息切れして、逆転されて負けるでしょう。

ドミニオンに勝つためには、1枚1枚のカードのプレイングを磨くだけでなく、終了タイミングの予測 −今回のゲームがどういう流れで、どのくらいのスピードで終了するのか− と、そこから予想される勝利に必要な勝利点数の予測、そして、それらを考慮した上でのプレイングの選択といったことも重要になってきます。
また、実際の場では、王国が準備された時点、各プレイヤーが初手を買った時点、その後の展開などで、これらの予測は順次修正されていくと思うので、そういったゲームの展開にあわせて、柔軟にプレイングを修正していくことも必要になっていくと思います。

※以後、記述を略すために、早めに勝利点を買うプレイを「高速型」、デック構築を重視する分、高速型に比べて勝利点購入が遅いプレイを「構築型」と記述します。
実際は、対比的な問題であり(「書庫と祝祭、金貨をそれぞれ2〜3枚買って、後は属州(勝利点)購入」というプレイは、鍛冶屋2枚のみの鍛冶屋ステロイドに比べれば構築に手がかかっているといえます)、また、一括りにする中でも濃淡がありますが(それこそ勝敗度外視で「毎ターン8金コンスタントに出るようになるまでは属州を買わない」という極端に遅いプレイもありえはします)、とりあえず議論を分かりやすくするための概念的な話題と捉えてもらえると幸いです。


一昔前にドミニオンGUIというフリーのドミニオンのCPU対戦ゲーム(Humanプレイヤー1人と、COM3人の4人戦)が流布していましたが、初めて遊んだプレイヤーのほとんどは、そのゲーム展開に戸惑いを覚えたことと思います。
※残念なことに、最近は入手(Downlord)することは出来ないようですが。

だいたいデックが組みあがって『戦いはこれからだ!』というタイミングで、あっさりゲームが終わってしまうのです。
ドミニオンGUIのCOMのプレイ方針はかなりシビアで、容赦がありませんでした。別にCOMのドローなどにイカサマがある訳ではなく(シャッフル時のランダム化に少し問題があるのでは、という指摘はありましたが)、COMは定められたプレイ方針に従ってプレイしているだけなのですが、Humanプレイヤーが勝てるようになるまでには、かなり練習が必要でした。
※参考までに、次項にドミニオンGUIのCOMのプレイ方針を記載しておきます。かなり簡単なルールで定義されている割に、そこそこ上手く働いており、いろいろ考えさせられます。

結論から言えば、COM3人が「高速型」でプレイングをしているのに対して、Humanプレイヤーが通常リアルのプレイでよく見られる「構築型」、つまり遅めのプレイをしているのが原因であることがほとんどだと思います。

では、このアルゴリズム(高速型)をもって、リアル(交流会など)でのドミニオンのプレイに臨んだ場合、高い勝率を得られるのでしょうか?
実は、そうでもありません。

このプレイ方針(高速型)は、『3〜4人のプレイヤーが、まっすくに3〜4枚の属州を購入する』という前提にたち、従って、そういう速度でゲームが終了することを前提にしています。そのため、早い段階から公領を買っても息切れする前にゲームが終了し、そういった公領などの購入の差でゲームが決まるという構造になります。
GUI内では、少なくともCOM3人がこの方針でプレイするため、Humanプレイヤー1人が「構築型」で遅い(じっくりとした)プレイをしても、そのまま押し切ってしまうことが出来ます。
逆に、リアルの場合、「高速型」よりも、「構築型」のプレイヤーの比率が増えるため、「高速型」だと息切れする可能性が高くなります。
さらに初心者(初プレイのプレイヤー)が入る場合、『遅い』というカテゴリーに、「(終盤での逆転を狙って)デックを構築している分だけ、(勝利点の購入が)遅い」という、明確な狙いがあって遅い場合だけでなく、「意味もなく遅い」(プレイが下手なせいで遅い)場合も入ってきます。
そのため、「高速型」はさらに不利となります。

但し、高速型が息切れするといっても、息切れした時点で、勝つために十分な勝利点を獲得していれば問題ありません。
しかしながら、この「勝つために十分な勝利点」というのも、各プレイヤーのプレイ結果によって変動します。

ドミニオンの終了条件は、「属州切れ」か、「3山切れ」で、3山切れの場合、どんな勝利点の分布で終了しているか分かりませんし、属州切れの場合も、公領をはじめとしたその他の勝利点もあるため、属州の枚数だけで勝利が決まるわけではありません。
ただ、プレーンな場、つまり、特殊な場(魔女や庭園のような強力に場を支配するカードや、特殊なコンボやプレイが出来る場)でなければ、一般的には「属州の獲得枚数+α(主に公領の獲得枚数)」で勝敗がつく場合が多いような気がします。
4人プレイの場合、1人辺りの属州枚数(割り当て)は12/4=3枚となります。
つまり、全員のプレイの速度が均衡して、勝利点もかなり均衡するような展開の場合、「属州4枚」や、「属州3枚+公領(を他のプレイヤーより多め)」を確保したプレイヤーが勝つ流れになります。
その観点から言うと、属州3〜4枚を獲得したあたりで息切れした場合、十分勝ち目があるといえます。

もちろん、前述のように初心者が2人いて、その2人がなかなか属州購入に絡めないような場だと、属州4枚くらいで息切れした後に、残り1人の構築型のプレイヤーが属州6枚くらい確保して逆転する展開もでてきます。

ただし、今回の考察は、「大会上位卓で」「全員が中級者以上」という前提の元の考察となります。
で、少なくとも、基本セットに限った場合、「原住民の橋」みたいな一発コンボはないので、「コンボ環境が整う前にゲームが終盤に入り、手も足もです、ほとんど勝利点が取れなかった」といった展開もないはずなので、全プレイヤーがある程度の勝利点(属州)を確保することは前提として良いと思います。

そうなった場合、属州3〜4枚確保までが早いプレイングは有望な戦略になると思います。例え、それが属州5〜6枚が目標になると失速する場合でも。
鍛冶屋ステロイドの実際のプレイは次回にまわしますが、属州3〜4枚を目標とした高速型として考えると、かなりよい感じのプレイングになります。
少なくとも、礼拝堂プレイで属州4枚(屋敷廃棄の分、礼拝堂プレイは余計に属州が必要になります)獲得より、鍛冶屋プレイで属州3枚の方が平均的に早いプレイになると思います。

なんか、やっぱり観念論によりすぎた議論のような気がします。
次回は、鍛冶屋ステロイドの実際のプレイについて説明したいと思います。