基本に帰ろう (その3) 魔女

基本セットに限らず、収穫祭までの全てのカードを眺めても、魔女が最強のアタック・カードの一角を占めるカードであることに異論はないと思います。
基本セット環境で魔女がある場合、単純に初手5-2のプレイヤーがそのまま勝つことも多く、「ドミニオン運ゲー」という声を良く聞いた記憶があります。
※今回もとりあえず庭園の無い環境で検討していきたいと思います。

とりあえず魔女が場にあれば、魔女を中心に話は進みます。魔女以外のカードは、全ておまけ状態となることも少なくありません。
魔女が場にある場合、とりあえず、まずは全員が魔女にアクセスしようとすると思います。
陰謀以降の環境であれば、自分は魔女を買わずに対抗できるカードもありますが(交易場とか、再建とか)、基本セットのみの環境では、ないといっていいと思います(庭園が併存する場合は除く)。
ただし、礼拝堂がある場合も少し話が変わるので、まずは礼拝堂も庭園も無い場合について説明します。

堀(のリアクション)がなければ、魔女が10回発動した時点で呪いが尽きます。
ある意味、魔女戦とは、この10回の権利の奪い合いともいえます。1人あたりで考えると2.5回。もちろん、自分の魔女の発動が多ければ多いほどよいことになります。
序盤に1回でも多く自分の魔女の発動を滑り込ませること出来れば、そのために11回目以降になった他のプレイヤーの魔女の発動を無効化した(呪いが尽きているため、単なるドロー・カードになる)ともいえます。また、より早く呪いを撒けば、それだけ他のプレイヤーの行動を遅くすることが出来ます。

で、10回発動した後(呪いが尽きた後)の魔女は、呪いでデックが汚染された環境下でのアクション消費の2枚ドロー・カードなので、あまり性能は高くありません。10回分しかないということは、全員が魔女に群がれば、呪いは早々に尽きます。そう考えると、何も考えずに魔女をたくさん買いこんでも、後で困ったことになります。

4人とも魔女に群がる場合、私の経験上は魔女の適正枚数はデックに2枚のような気がします。
もちろん、魔女に行かないプレイヤーがいるのなら(それこそ自分一人しか使わないなら)3枚目以降の購入が有効な場合もありますが、全員中級者以上という前提であれば、そんな状況はないでしょう。
ただし自分が大幅に乗り遅れた場合は、1枚という場合もありえます。
重ねて言うと、有効な魔女発動の権利は最初の10回分しかありません(堀がない場合)。

目安として、2廻り目のシャッフル(4ターン目のクリーン・ナップに、5ターン目の手札を引く際に起こるシャッフル)の前であれば、手札に5金以上集まれば、迷わず魔女購入となります。
また、初手5-2スタートのプレイヤーがいないとか、2廻り目に他のプレイヤー達が2枚目の魔女の購入に失敗しているとか、堀が出回っているといった場合は、3廻り目でも2枚目の購入を検討してよいと思います。
逆に、5-2スタートのプレイヤーが多いとか、他プレイヤー達が2廻り目の時点で魔女2枚を確保できている場合などは、デックに魔女1枚でも3廻り目での購入はパスでしょうか。魔女の代わりに、その後の展開に対応したカードを買った方が良いでしょう。

初手が5-2であれば、その幸運をかみしめながら5金の際には魔女を購入すればいいだけです。
2金の際は、場に2コストのカード(礼拝堂、堀、地下貯蔵庫)があれば、いずれも良い選択となります。同時に2種類以上が場にある場合は、この初手での優先度は礼拝堂→地下貯蔵庫→堀でしょうか。
防御の堀より礼拝堂、地下貯蔵庫の優先度が上なのは、とりあえず5-2スタートで先手を取っているので、なるだけ魔女の稼働回数を稼いで、少しでも先んじて呪いをばら撒くためです。
逆に4-3プレイヤーも魔女を購入して追いつき、呪いばら撒き合戦が苛烈になる頃(3廻り目)には、地下貯蔵庫より堀の方が、意義が高くなります。そのため、2廻り目に運悪く2金しかない場合、堀が購入対象になります。また、他にも初手5-2のプレイヤーがいる場合は、初手でも堀の優先度をあげていいと思います。
2コストにカードがなければ、さすがに2金の際はパスでしょう。

どちらかというと魔女戦で問題になるのは4-3スタートの場合でしょうか。
確実に3〜4ターンに魔女を買える体制を整える必要があります。

庭園、礼拝堂がない基本セット環境で、4-3スタートの初手候補は、かなり特殊な王国セットでなければ、

【銀貨×2】【宰相−銀貨】【民兵−銀貨】【役人−銀貨】【鍛冶屋−銀貨】【金貸し−銀貨】【祝宴−銀貨】

あたりでしょうか。
3〜4ターン目(2廻り目)に魔女を2枚獲得することを考えると、やはり祝宴−銀貨が一番確率が高くなります。
また、魔女を獲得した後に、魔女と被っても動きを阻害しないという点で言うと、銀貨×2も、有力候補です。魔女2枚を買うことが前提であれば、この時点であまりアクション消費のアクションは買いたくないという意識が働いても、おかしくはないと思います。
ただ、呪いの分だけ普段よりもデックが膨れるので、通常よりもアクション・カードは少し多めに購入してもいいと思いますし、さらに言えば、特に初手5-2プレイヤ―がいる中の4-3スタートであれば、その時点で不利なので、被った場合のリスクを取って、被らなかった際に差を詰められることを期待して、アクション過多気味なのを理解したうえでアクション・カードを購入するのはありだと思います。

で、民兵に関して言うと、初手5-2プレイヤーがいるかという点がポイントだと思います。4-3スタートのプレイヤーに対しては、上手く刺されば、2廻り目の魔女購入を阻む可能性があります。ただしそうなると、既に魔女を買って走り始めている5-2プレイヤーの独走を、さらに許す結果になりかねません。また、中盤以降は、呪いが蔓延するため、いつも以上にアタックの効果の切れが落ちるのは早いでしょう。
1ターン目3金、2ターン目4金で、初手5-2がいないことが分かった2ターン目(もしくは、1ターン目でも4番手であれば)、民兵は考慮に値しますが、それ以外は微妙な気がします。

役人に関しては、使用したターンではなく、その次のターンのお金状況が改善される点が問題になります。3ターン目に使えれば問題ありませんが、4ターン目に役人を使用する状況の場合、2回目のシャッフルに魔女購入が間に合いません。そう考えると、魔女戦では役人−銀貨スタートは微妙と思います。

金貸しに関しても、確かに銅貨圧縮の分だけ魔女稼働率が少し上がりますが、同じく微妙なところです。呪いのせいでデックの生産力期待値が低くなるため、銅貨を圧縮してもあまり生産力期待値が上がらず(元の期待値が1枚当たり1.0金だと、銅貨を廃棄しても平均値は変わらず、あまり変わらない)、さらに呪いの分、金貸しと銅貨と揃う確率もいつもより低くなります。

宰相−銀貨に関しては、私は悪くないと思います。特定のカード(魔女)を使い倒すという観点で言うと、そこそこやってくれます。
それこそ、3ターン目に宰相込の5金を引けば、4ターン目の手札は、魔女込みでシャッフルした山札から引けます。その後も、魔女が山札に無い時点で宰相を引けば、シャッフルが入り、次に魔女を引くまでのタイミングを短くしてくれます。

鍛冶屋に関していうと、難しいですね。中盤に運悪く鍛冶屋のドローで魔女をひく可能性があり、逆にそれが怖くて鍛冶屋が撃てなくなるなら(それこそ、残り山札3枚で、魔女が入っているのがわかっていたら、鍛冶屋をうちたくないでしょう)、銀貨の方がまし、と言う話になります。
ただし、そういったドロー損なしに廻れば文句なく強力なので、初手5-2が2人以上いて不利な状況を逆転しなければいけないとか、それこそそれまでの点数状況的に1位を取れば予選突破だけど、2〜4位だと落選、といった状況の場合は、ありでしょうか。ただし、分散が大きくなって1位をとれる率は上がりますが、4位の確率も増え、平均値的な意味では微妙だと思います。1位でなくても(2位とか3位でも)大丈夫なら、銀貨×2スタートとかの方がいいでしょう。

整理すると、【祝宴−銀貨】、【宰相−銀貨】、【銀貨×2】がこの順に有力で、初手5-2がいなければ【民兵−銀貨】もありで、博打モードならば【鍛冶屋−銀貨】もありといった感じになります。

で、礼拝堂が場にある場合ですが、実は5-2スタートの魔女−礼拝堂がかなり強いです。
理想の動きは、3ターン目に礼拝圧縮、4ターン目に魔女を使用し、そのターンに2枚目の魔女か玉座の間を購入し、5ターン目以降は村、玉座の間あたりを加えながら魔女を連打しつつ(圧縮されているので、かなりの確率で1ターンに2回魔女を撃てます)、銀貨、金貨と加えていき、呪いが尽きる頃には悠々自分だけ属州購入モードに移行といった感じでしょうか。こんな動きをされると、4-3スタートはまず勝てません(まぁ、こんなに上手くまわる確率はかなり低いですが)。
ただし、魔女と礼拝堂が被って、ぐちゃる可能性もそこそこあります。そのため、2位でも可なら、魔女−地下貯蔵庫などのスタートの方が安全かもしれません。

4-3スタート側も、魔女を購入したり、礼拝堂を購入して圧縮や、呪いの廃棄で対抗できますが、魔女−礼拝堂スタートに比べると、どうしてもスムーズにいきません。
魔女購入を優先すると圧縮が遅れて魔女の稼働率が低くなり、圧縮を優先すると、そもそも魔女を上手く購入できない可能性が高くなりと、どちらかが立たなくなり、かなり頭が痛いです。
まぁ、といっても4-3プレイヤーは、魔女−礼拝堂プレイヤーが魔女・礼拝堂をかぶって引く(理想は5ターン目に2枚揃って引く)のを期待しながら、自分に出来ることをやるしかないわけですが。
で、順当に初手5-2プレイヤーにブッちぎられた場合は、残念ながら「ドミニオン運ゲー」と不平をもらすことくらいしか出来ません。

魔女と礼拝堂があって、全員4-3の場合は、魔女購入に走ってもいいし、それこそ、通常の礼拝堂圧縮に動いてもいいと思います。
他のプレイヤーが2廻り目に魔女を買っても、3廻り目に魔女が起動する前に、少なくとも一度は礼拝堂の圧縮が入るので、その後の呪いに対する対応は困難ではないでしょう。特に、村、祝祭などから書庫や議事堂をかませる形になりそうなら、毎回引き切った後に礼拝堂で呪いを排除していくことも可能でしょう。


とりあえず全員が魔女を買って、中盤は呪いをばら撒きあうわけですが、形勢が不利な場合(で、どうしても1位を取りたい場合)は、飛び道具として玉座の間があるなら、投入する場合があります(2枚目の魔女を買いたかったのに、手札に4金しか揃わなかったときとかも含む)。
何せ、魔女と揃うと一気に2回分呪いをばら撒いてくれます。村や祝祭投入から、魔女2枚が連鎖するより確率は高くなると思います。
もちろん、手札に玉座の間と魔女が揃う確率もそれほど高くないでしょうが、まぁ、揃わなかったときは、負けが、より圧倒的な負けになるだけです。

で、呪いが蔓延すると、ほとんどのアクション・カード(特にドロー系のカードとか)が、いつもより色あせて見えることでしょう。点数が上がるのは堀(呪いが尽きるまで)、地下貯蔵庫、祝宴(公領にアクセス)、冒険者くらいのものでしょうか。

呪いが尽きた後の展開は、場のコンセンサスによるような気がします。
呪い以外に、屋敷/地下貯蔵庫/公領辺りの2山が切れて、さっさと3山切れになることが多そうな気がしますが、山切れを起こさずに、属州が買えるようになるまで頑張る展開も一応ありえます。
誰が勝っているかわからない状況で、疑心暗鬼で誰も山切れの方向に動かない場合や、明らかに勝っている人がいて、その人以外山切れに動かない場合とか。
特に礼拝堂がある場合は、ある程度呪いからのリカバリーも期待できるので、後者の展開で逆転を期待する場合もそれなりに見られるような気がします。

で、自分以外のプレイヤーの動向を見て、場のコンセンサスを読み取るようにしましょう。
読み間違うと、敗北につながります。
前者で、みんな屋敷や公領を一生懸命買っている中で、自分は悠長にアクション・カードを買っていたら負けるでしょうし、逆に、後者で皆がデックの構築を頑張っているところで、一人だけ屋敷とか一生懸命買いあさった挙句に、3山切れる前に力尽きた場合も、負けでしょう。

呪いの廃棄方法として礼拝堂は別格ですが、改築も検討に上がると思います。
前者(とりあえず呪いが切れた時点で雰囲気が終盤モードで、これから、みんな公領や屋敷を一生懸命買うモードになりそう)なら、改築は呪いを屋敷に変えることが出来るので、かなり良いカードになります。逆に後者の場合は、いろんな意味で後手になるでしょう。呪いを屋敷に変えても、勝利点状況が良くなるだけでデックの運用状況的には変わらないし、そもそも山切れを避けたい場合は、屋敷や地下貯蔵庫に変換すること自体、避けたいかもしれませんし。

次回は鍛冶屋ステロイドということで。