大会のサプライの準備方法

※同じく旬の時期を過ぎてしまいましたが、年明けの第5回木ドミ・ミニトーナメント後に書いて推敲せずに放っておいたものが発掘されたので、少し手を加えなおして記事にあげてみました。

現在、考えられる大会使用サプライの選択方法としては、大きく二つに考えられると思います。

(1) 主催者作成サプライを使用(例えば先日の日本選手権の予選)
(2) その場でランダムにチョイス(日本選手権の本戦)

その上で、使用する10枚が選ばれている通常の方法以外に、変則方法として

(A)14枚のサプライからvetoモード(1番手から順番に1枚ずつ抜いていく)
(B)8枚のサプライに、3番手、4番手が1枚ずつ加える
(C)ドラフト形式

といったものが考えられます。

(B)が、年明けの第5回木ドミ・ミニトーナメントで新しく採用され、前回のゆるドミでも使われた方法になります。
(A)、(B)の場合も、元からある14枚や8枚のサプライを(1)主催者側が事前に用意しておくのか、(2)ランダムにするのかといった違いがあります。

また、枚数を変更することで細かい変更はいくらでも出来ると思います。
※例えば(A)で13枚にして2〜4番手だけvetoするとか、(B)で元のサプライを7枚に減らして2番手も選ぶとか、(B)で9枚のサプライに3、4番手が1枚ずつ加えた後に、4番手が1枚抜くとか)

※結論から先に書いておくと(予防線をはっておくと)、いずれの方法も長所・短所があるので、主催者の好みで選べばよく、どの方法が絶対的に良い・悪いというのはないと思います。可能であれば「場(大会参加者)の雰囲気にあわせた方法がいい」というのはあると思いますが。

さて、それぞれの長所、短所を挙げると

(1) 主催者作成サプライを使用
【長所】:酷い(駄目な)サプライでのプレイがなくなる(はず)
「酷い」例としては、いわゆる「手番ゲー」とか「初手5-2必勝(必敗)」みたいな参加者の技量が結果に余り反映しないサプライとかでしょうか。
【短所】:サプライに主催者個人の意図(好みとか)が入る。主催者の準備が大変
主催者が公正であっても、例えば主催者の好みのサプライを知っている(さらに突っ込めば、そういうサプライでプレイし慣れている)プレイヤーが有利になるといったことはありえます。
ただ、主催者の好みを知っているかどうかという点はおいておくとして、(テストなんかの問題予想と同様)上級者なら「(使用するセットの組み合わせから)こういったサプライや、こんなのが出そう」というサプライ群の予測は出来るようになり、それに基づき事前に練習・調整できる(もしくは、練習しなくても、どういうプレイになるか想定しておける)ので、そこがさらに初心者との差になるということもあるような気がします。

(2) その場でランダムに10枚をチョイス
【長所】:主催者の準備が簡単。サプライに個人の意図が入っていないので、公正感がある
【短所】:「酷い」サプライが現出する可能性がある

「最巧のプレイヤー」ではなく、「最強のプレイヤー」・「(最)強運のプレイヤー」を決めるサプライになると、上級者の人は興醒めするかも知れません。

(A)、(B)に関しても、主催者作成とランダム選択の場合があり、その分は(1)、(2)と同様の長所・短所を幾分含みますが、プレイヤーがカードを増減させて調整するためか、その分の印象はかなり緩和されます。
・・・(1)主催者作成で、極端に走った(オール・アタックとか)場合は別ですが。

(A)14枚のサプライからvetoモード(1番手から順番に1枚ずつ抜いていく)
【長所】:とりあえずどうしても嫌なカードは抜けばいいので、(プレイヤーが)酷いと思うサプライになりにくく、その分、参加者に不満が生じにくい(嫌なカードがありすぎる場合は別ですが)
【短所】:幾つかの傾向のサプライが出にくくなる(丸いサプライになりやすい)

アタック・カードやその類は、手番に関係なく嫌って抜いてくる人も多いですし、後手番の人は競技的にもアタック・カード(特に呪い関係)を抜いた方が有利になる場合が多く、どうしても丸い(アタック・カードとか尖ったカードのない)サプライが多くなります。
・・・主催者が断固たる意志で「グダグダになるカードばかり」を集めたりしたら別ですが。

この場合、特定の傾向のサプライが除かれるのは、どうなんだろうという話になります。
まぁ、そういう話でいうと、(1)主催者作成の場合も「手番ゲーや、運任せになりやすいサプライが除かれる」という面がありますが、そこは結果にプレイヤーの力量をなるべく反映させたいというところから来ていますが、こちらの場合「プレイヤーの嫌い(苦手)なカードが抜かれる」となると、各プレイヤーの実力の把握という面から言うと微妙な気がします。

(B)8枚のサプライに、3番手、4番手が1枚ずつ加える
【長所】:手番的に不利な下位手番にモチベーションを与える、派手な展開になりやすい
【短所】:プレイヤーに対する要求レベルが高い、(A)とは逆の傾向のサプライが出やすくなる(極端な展開のサプライになりやすい)

まずvetoの抜く(今、目に見えている14枚のカードだけを考えればいい)という行為に対して、加えるカードを考える場合、選択肢が広くなります。年明けの「第5回ミニトーナメント」や「ゆるドミ」の場合でも、選択できる候補は100種類以上になっている場合もありました。
全カードを把握していない初心者には無理ですし、ほぼ全てのカードの効果を覚えている中級者にとっても、候補になるカードを思い出しながら、さらにサプライでの展開を考えて候補を絞るのは、かなりハードルが高くなります。
だからといって、カード・リストを用意して選ぶと時間がかかりすぎますし、大会なのでチョイスする時間にも制限時間を設けざるをえず、そう考えると、かなり要求レベルの高い方法のような気がします。

それこそ悩んで決まらないなら、サプライに関係なく自分の好きなカードを選んだり、「右手」(適当につまんだカードを、不満がなければそのまま使う)でもいいのですが、3〜4番手が与えられた機会を十全に活かしきるには、かなりのレベルがいるような気がします。
選べる範囲を「異郷のみ」とか、それこそ「この○枚から」みたいに狭めて、要求レベルを下げることはできそうですが(逆に、選択範囲を狭めると、3〜4番手プレイヤーの選んだ感が少なくなるところがあるので、その辺は、参加プレイヤーのレベルに併せてという話になります)。

競技的に考えると、3〜4番手が後手番の不利を覆そうとすると、どうしても極端(例えば手番差を吹き飛ばすような運ゲー度の高いカードとか)なサプライになりやすく、展開が偏りやすいところはあります。
それが楽しいと思うかどうかは、結構そのプレイヤーの性格や、周りの雰囲気によるような気がします。

あと、今回みたいに選択範囲を広く取っている場合、この方式を競技的に検討を続けた人間がいたとしたら、「このパターンはこのカード」みたいな定跡みたいなものが出来て、そうすると実際のプレイも似た展開になる可能性があります。
その辺はドラフトでプレイする場合も似たような危惧を持った記憶があります。
ただ、突き詰められる程この方式がプレイされることも、この方式を検討する人間もいないだろうから、問題ではないという話もありますが。

逆に長所としては、不利な後番手のプレイヤーにモチベーションを与えるというところがあります。
「選ぶ」というのは一種のパフォーマンスともいえます。
パフォーマンスを求められると、それだけで「燃える」という人も多いのではないかと思います。
ただ、そう考えると、場の空気を読まずに(派手なパフォーマンスを求める雰囲気の中で)「競技的に後手番が有利なカード」や「競技的にしっかりしたカード」を選んだり、逆に(競技性を求める人が多い卓で)「派手なだけのカード」を選んでサプライが壊れた場合などに「場が白ける」危険性というのもあります。

また、要求レベルが高いということは、逆に達成したときの満足度も高いということになります。
自分の得意なプレイに持ち込んで番手差の不利を覆して勝利したり、派閥が分かれる(例えば属州派と、特殊勝利点派とか)カードを導入して、後手番でそのバランスを見極めることによって勝利を得られたとしたら、非常に満足出来るでしょう。
あと、自分の好きなカードでプレイできたとしたら、負けたとしても、悔しくはあっても、納得感や満足度は高いような気がします。

他に、(A)、(B)のプレイヤーがサプライを加減する方法の場合、各卓のサプライがかなり違ったものになることが多く(特に(B)の加える場合)、大会後に別宅のプレイヤーとの技術的な感想戦がしにくいところはあるかもしれません(逆に、それぞれの卓で「どんなカードを加えたか?」という話題には事欠きませんが)。

まぁ、どんな選択をしたとしても、その卓にいる全員が同じサプライでプレイすることに変わりはありません。手番差とか、初手「5-2」と「4-3」で有利不利はでてきますが、それもドミニオンということで。
※とはいえ、先日の世界選手権の大会運営はちょっと酷かったような気がしますが。

私の持論としては、「席順、並びも毎回全くランダムで、ランダム・サプライで100戦する(1,000戦とか10,000戦なら猶良し)」のが理想と思っていますが、実際は無理なので、主催者の好きな方法でいいのではないかと思います。

後編につづきます。