ドミニオンの大会使用時のサプライについて

気付けば、日本選手権まで1週間を切ってしまいました。
何か、6月中旬から忙しくて、(ユーロのせいだけでなく)ものを書く時間が無かったような。

さて、かなり以前にも同様の内容で書きましたが、その後も、この間の第4回北九州ドミニオン集会のルール決めの際や、今度の日本選手権のルールを見ている時などなどに、何となく考え続けてきたので、整理がてら少し書いてみたいと思います。

ドミニオンで大会を行う場合、使用するサプライをどうやって用意するかというと、大きく二つに分かれると思います。

(1)スタッフが事前に使用するサプライを準備(作成)しておく
(2)その場(かどうかはともかく)でランダムに選出する

東京などでの大会結果の記事を読んでいると、「(1)作成」の場合が多いように感じます。日本選手権も予選はこの方式ですね。
北九州で私も主催者の一人として行った4回の大会は、一部例外はありますが、基本は「(2)ランダム」になります。
で、もちろん両方の方法に長所・短所が存在しています。

「(2)ランダム」の場合、一番の利点は「公正性の担保」になると思います。人の意思の入っていない(神様の決めた)サプライということになります。
あと、準備が簡単(使用するセットのランダマイザー一式とか、スマホのランダマイザー・アプリがあれば事は済み、事前にサプライを考えておく必要がない)というのも利点の一つだと思います。

逆に欠点は、神様は大外れのサプライを選ぶこともあるということです。
「5-2必勝(初手5-2のプレイヤーが非常に有利)」とか、「手番ゲー(手番差が大きくて、手番が早いほど有利)」みたいな、プレイヤーの腕よりもランダムな条件の方が勝敗に及ぼす影響の多いサプライが出てくる可能性が否定できない(というより結構ある)ところです。
ドミニオン自体、ランダムなシャッフルが前提で、もとからランダム性に支配されるところが大きいゲームではありますが、余りにもそれが露骨に見えるサプライは、やはり白けてしまいます。

で、「(1)作成」の場合、大外れのサプライは出ないはずで、というより、少なくとも準備する主催者側は「盛り上がる」または「問題ない」と考えるサプライを用意してきます。そのため、参加者は「面白い」「良い」サプライでゲームが出来るはずであり、(少なくも、主催者の思惑通りになれば)大会のエンターテイメント性は高くなることが予想されます。
で、逆に欠点は「(2)ランダム」の際の長所の裏返しですが、公正性の担保の問題や、「人の意思の入った」サプライであること、また、事前準備の手間ということになります。

事前準備、というより「サプライを考え、作成する作業」といった方がいいですが、これはある意味、主催者の特権というか、ひと(主催者)によっては、醍醐味と感じる人もいるかもしれません。
「良いサプライ」「面白いサプライ」を作るということに全力を投入した場合、自分のドミニオンに関する知識を総動員した、高度な知的作業にもなりえます。
逆に言うと、そういうサプライを作れる人材が主催者の中にいるかどうかも、一つの問題点になりえます(地方なんかで大会を開く場合、結構この問題は切実なような気がします)。

あと、サプライを考える場合の付随的な問題として、「どのレベル」を対象にしたサプライを作るのかという問題もあります。
例えば、首都圏などのそれなりの大会(木ドミのミニ・トーナメントとか、ゆるドミとか、この間のフレンドリー・マッチとか)であれば、2回戦、3回戦になれば、トップの方の卓は実力者で占められるのでしょうが、逆に、この間、北九州で行った大会の場合、参加者12名の3卓で、参加者のレベルも元からマチマチということもありますが、予選最後の4回戦であっても、結構1番卓のプレイヤーの中でも実力に差があったように見えました。
まぁ、サプライを事前準備する際は、その辺も加味して作成しろということになりますが。
ただ、「これだ」と思って作ったサプライが外した場合は、結構、居た堪れないものがあるような気がします。
閑話休題

で、「公正性の担保」という面で考えると、実際に問題があることを疑う(例えば、主催者が事前に一部の参加者にだけサプライを教える等)というよりも、「違和感を感じる」といったところでしょうか。
※日本選手権はともかく、私的に開かれる大会の場合、主催者が何を考えて主催しているかを慮れば(少しでもドミニオンを広めて、盛り上げようといった)、公正性の部分を疑うべくも無いですが。

私の場合、何となく、こういうものは「ランダムに決めるものだ」といった漠然とした認識があって、その認識に反していることに違和感を感じます。
ちょっと話が違うかもしれませんが、予選1回戦の組み合わせを、ランダムな組み合わせでなく、主催者が「各参加者の実力などを加味して組み合わせを決める」と言ったら、(もしかしたら、そうすることで、大会が最初から盛り上がるかもしれませんが)、大半の人は違和感を感じるのではないかと思います。
※以前の実績を数値化した順位だとか、バイ(不戦勝)だとかのルールが明確になっていて、その数値に従ってとなると、話は別ですが。

似たように使用するカードを準備するという作業がある競技といったら、コントラクト・ブリッジなんかもそうですが、ほとんどの大会ではランダムに配られたカードを使用していたと思います。
似たようなケースが、ほとんどがランダムなので、そういう認識を持っているのだと思います。
コントラクト・ブリッジの場合、52枚のカード(トランプ)を13枚ずつに分け、4か所の穴の開いたボードに詰めたモノを、実施するゲーム回数分用意しておき、「同じ席の人が、同じカードを取ってゲームを行う」方式が多いですが、13枚ずつにカードを分ける方法はランダム・シャッフルがほとんどで、例えば「○○という技法を使う」ことをテーマにしたデックを主催者側が準備するような場合は、ほとんどないように思います。
・・・よく考えると、コントラクト・ブリッジの場合、見えない部分のカード配分の確率を慮ってプレイするというのも技術の一つにあるので、作成された(主催者が作った)ハンドの場合、その辺が微妙という話はあるような気がします。

ただ、実はドミニオンの場合、基本のルール・ブックには「10種類のサプライは、プレイヤーの合意する好きな方法で選べ」としか決められておらず、選定方法の例として「ランダマイザーを用いることで、ランダムに(手軽に)サプライを作成できる」ことは書いてあっても、「それでプレイしろ」とは、どこにも書いてなかったと思います。
なので、ランダムに選出された「こんなの鍛冶屋ステロイド一択だろう」といった(どうしようもない)サプライについて、「これもドミニオンの一面」と考える(あきらめる)人がいてもいいですが、逆に「上手く選定されて、やりごたえのあるサプライしか認めない」という人がいてもいいことになると思います。
そう考えると、「作成したサプライ」を使うことも、一つの考え方ということで、問題無いような気もしてきます。

あと、公正性の担保の追加点として、不正という程ではないですが、主催者(作成者)の好みを知っている(主催者と同じコミュニティーの)人と、知らない(外部の)人で、若干有利・不利が出る可能性がある点は、あげられるかもしれません。

また、作成したサプライを使う場合、「人の意思」の入ったサプライになるという点は、若干の問題点というか、検討点を含むことになると思います。
作成されたサプライを見た瞬間に、「作成者の意図を読もう」と考える人も出てきます。
通常、ランダム・サプライで出てくれば「空気」と思ってすぐに見過ごすようなカードでも、「何か意図があって、入っているのではないか」と考えてしまいます。
もちろん、数合わせに入れられた場合もあるだろうし、逆に、そう思わせる「ひっかけ」の場合すらあるかもしれません。
また、参加者の実力が充分に高ければ、そういった作成者の意図とは関係なく、正解に辿り着けるはずです。
ただ、サプライが公開された際に「単純な○○が良さそうに見えるけど、(作成されたサプライで)流石にそれはないだろう」みたいな発言があると、問題とまではいわなくても、微妙な気はします。

だんだん観念論になってきて、現実から離れてきているような気もしますので、そろそろ、まとめを。
実際にサプライを作成するとしても、「サプライを作ること」自体をここまで考えて作らなくてもいいのかもしれません(作るサプライ自体には、限界まで頭を使うべきかもしれませんが)。
まぁ、いまのところドミニオンにはガチの公式戦としての競技ルールがあるわけではありません。
はっきり言えば、参加者(及び主催者)が、大会終わった後に「楽しかった」と思えば、どんなやり方であっても、それは「良いやり方」だと言えると思います。
そうやって上手くいっているのならば、外部の人間が「間違っている」とか「こうすべき」とか言うべきではないというか、そういうことを言うのは余計なお世話という気がします。
囲碁とか将棋、そこまでいかなくても、MtGレベルの「公式」があったら、また別の話になるような気もしますが。

で、次に自分が大会を主催するとしたらどうするかというと、こんな感じかなと。(予選4回戦+決勝の場合)
基本的に、私は「ランダム」でやるべきかなという考えですが、短期決戦(決勝含めても5戦とか)だと、完全ランダムだと酷いことになる可能性もあって、それもどうかなとは考えています。
実際、北九州の第3回大会では、決勝含めた5戦の間に、「魔女」1回、「香具師」2回が出た上に、香具師は2回とも都市と組み合わせで出現し、かなり問題を感じました。
(と言いながら、第4回は使用セットを決める以外は、完全ランダムでやってしまいましたが)。
※ちなみに「リーグ戦100回」といった充分な回数をやる場合、「回数自体がバランスを取ってくれる」という認識のもと、全試合ランダム・サプライでやると思います。

・サプライ準備委員として、大会主催者から、ある程度以上のドミニオンの知識のある人間を2名立てる
・事前にランダムで10種類(途中で使用セットを変えるなら、1戦あたり2〜3種類)ぐらいのサプライを用意し、その中から予選4回戦で使用するサプライを選ぶ
・決勝はその場でランダムに14枚を選び、参加者が1枚ずつ拒否権を投じる方式で決定(この間の北九州の第4回大会の決勝と同じ)

まぁ、完全ランダムにしておけば、参加者が足りない場合(特に7人とか11人とか4の倍数に一人足りない場合)、主催者の私にも参加する目が出てくるという邪な期待も持てますが。

・・・読み返してみると、短期決戦(決勝入れても5回戦)なのが問題なような気もしてきました。
リーグ戦100回とかできれば、余りこういった問題も考えなくていいような気がします。
大会にしても、4回戦でなく、8回戦とか10回戦にすれば、(ある程度ランダムでやっても)かなり改善されるような気がします。
まぁ、実際はそれだけの長さの大会を実施するのはいろいろな制約から難しいので、短期4回戦で、半分お祭り(イベント)として実施することになるわけですが。
・・・日本選手権の予選初日も4回戦×2とかでなく、MtGのGPみたいに8回戦とかにしてくれればいいのにと思わなくもないですが(MtGの場合、4人戦でなく対戦であることもひとつの要因ですが)、会場のキャパとか、それ以上にその他のいろいろを考えると無理でしょうかね。

あんまりまとまりはありませんが、この項目はこれまでということで。