ワールドモンガーについて

たまにはドミニオン以外の話題を。
といっても、話の端緒はドミニオンなわけですが。
昨秋のゲーム・マーケットで販売されたワ−ルドモンガーというゲームを、何度か遊んでみましたので、その感想を。
※ルールや概要などは、製作者さんのページから確認できます。

「ワールドモンガー」はゲームのアイデアを聞いた時点で、大半のゲーマー(特にドミニオンなどのデック構築ゲーム好き)から「すごい」「おもしろそう」という反応が返ってくるのですが(私もそうでした)、私の周りで実際にプレイしてみた人の感想を聞くと「何かもやもやする」「(勝ち筋が)わかりにくい、わからない」と微妙な反応が返ってくることが多かったりします。
その辺は、ゲームの構造をある程度理解しないと「わからない」だろうと思われ、またドミニオン的な視点でゲームの構造などについて幾つか考えたこともあるので、その辺を言及してみたいと思います。
※以下、説明にいい加減な用語を用いています。またゲームの世界観よりシステムの説明に偏った説明になります。お気に触ったら申し訳ありません
※以後、個人の感想ですので、間違いがあったら申し訳ありません。

さてボード・ゲームのジャンルの一つに株・経営ゲームといったものがあるかと思います。
例えば鉄道会社の株の売買と経営をメインとした「18XX」シリーズなどです。
「18XX」シリーズでは、プレイヤーは主に鉄道会社の株を通して(その売買や配当で)利益を上げるのですが、各鉄道会社の経営は、その会社の最大株主が社長として行います。
配当などは全株主に持ち株数に応じて支払われるので、会社の利益が全て社長に行くわけではありませんが、会社の経営方針、つまり会社のお金をどう使うかは、社長が独断で決めることができます。
といっても、株主全員に配当を出すかどうかとか、下位者のお金を払って線路を敷設したり新型列車を購入するかどうかといったことにしか使えず、社長に給料を払ったり贈与したりするようなダイレクトなことはできません。
株券の販売数は、各鉄道会社とも10%ずつの10枚(厳密には20%+10%×8枚の9枚)となっており、株式市場で売買されます。
すべて(100%分)の株券が買われてしまえば、誰かが売りに出さない限りその会社の株を買うことはできませんが、100%分が買われるまでは常に株式市場で販売されており、誰でも買うことができます。
株価は、会社が株主に配当を払ったり、株券が売り切れていたりすると上昇し、市場に株券が売られたら下落するといった構造をしています。
ゲームの勝敗は、ゲーム終了時に最もお金を稼いだプレイヤーの勝利となります。
シリーズごとに違いはありますが、だいたいこんな感じになります。

延々と株・経営ゲームの例として「18XX」シリーズの話をしてきましたが、実は「ワールドモンガー」を説明するのに都合が良いからです。
「ワールドモンガー」の特徴を簡単に説明すると『株価、株券販売枚数の操作をデック(構築)で行う(デックに委ねた)株・経営ゲーム』となるかと思います。

背景としては、プレイヤーは神様ともいえる立場の存在となり、ゲームに登場する4つの文明(ドミニオンの王国カードのように15種類の文明から適当に選ばれます)に影響を与え(その文明の株券を買う)、文明が育ったら影響力を回収し(株券を売る)、ゲーム終了時に最も影響力(お金)を持っているプレイヤーが勝利となります。
また各文明について最も影響力(株券)を持っているプレイヤーが、その文明を操作します(社長となります)。
ぶっちゃけると「経営されるのが企業でなく文明」、「自身が投資家でなく神」という点をのぞけば、株・経営ゲームそのものと言えます。
※ルールや概要などは、製作者さんのページから確認できます。

各ターンに各文明はデック(山札)から5枚のカードをめくり、その文明の社長(最大株主)が公開されたカードの処理を行います。その中にアクション・カードがあれば、社長がそのカードをプレイするか、プレイするならどのようにプレイするかを選択します。したくなければプレイしないことも可能ですし、誰も株券を持っていない文明(社長がいない文明)の場合、何もプレイされません。
それらの処理が終わった後に「公開されたカードの金量の合計+2金」が、(そのターンの)その文明の株券の価値(株価)となります。
ターン毎に公開されるカードが違うため、株価は変動することになります。
各文明の初期デックは「農民7枚(価値:1金)、株券6枚、各文明固有のサプライ・カード2種類を各1枚」の合計15枚になります。サプライ・カードは単にお金を出すだけのカードの場合もあれば、アクション・カードのようなものも含まれます。

各文明の処理を行った後に、各プレイヤーは株券の売買を行いますが、1ターンに「株券を1枚買う」「1つの文明の株券を好きな枚数だけ売る」「パス」のいずれか一つしかできません。
また、ある文明の株券を買いたくても、現在公開されているカード中に株券がなければ(もしくは、あっても先手番のプレイヤーに買われて無くなると)、お金を持っていたとしてもその文明の株券は買えません。
売買時の値段ですが、各文明の「現在公開されているカードの金量の合計+2金」が、そのまま値段となります。

その後、各文明ごとにサプライからカードを1枚獲得します。サプライは、今回登場する文明のサプライ・カードと農民から形成されます。
社長がいれば、社長がサプライから自由に獲得するカードを選びますが、社長がいない(誰も株券を持っていない)文明の場合、その文明で指定されているカード(その文明の2種類のサプライ・カードのうちの片方)が自動的に1枚獲得されます。
獲得するカードは常に自動で1枚となり、購入のためにお金などは必要でなく、現在の株価などは全く影響を及ぼしません(公開されたカードの金量の数値は、株券売買時の株価にのみ使われます)。
また、一部の例外(社長がいない状態で自動で獲得するカードが山切れ)を除いて「カードを獲得しない」ことはできません。
実際のところ、各文明の違いは名前を除けば初期デックのサプライ・カード2枚と、社長不在時に自動で獲得するカードだけになります。
そのため、それぞれの社長の方針によっては、忍者の横行するエジプトの隣で、ピラミッドを建てまくる倭国という図もあり得ます。

その後、クリーン・ナップがあってターンが終了します。
ちなみに、獲得の処理だとか、ドローする際に山札の枚数が足りなければシャッフルする点などは、ドミニオンと同じ処理になります。
ただしサプライ・カードのうち、いわゆるアクション・カードについては全てフリー・アクション(元からすべてのカードに+1アクションがついている)のため、公開されたアクション・カードは好きなだけ使うことができます。

ターン終了時に、サプライに2つ以上の山切れがあれば『次のターンの終了時にゲーム終了』となります(終了トリガーが引かれた後、1ターンだけ、株券を売りさばく時間が与えられます)。
ゲーム終了時にお金を最も多く持っているプレイヤーが勝者となります。
ゲーム終了時に残った株券は、基本的には紙屑(0金)となります。
※例外的に、ゲーム終了時にデックに含まれれば、その文明に「終了時勝利点」を与えるサプライ・カードが存在しますが、今回は簡略化のため、これらのカードの存在は割愛して説明します。
ルールとしては、ざっと以上となります。

さて、初めてプレイする場合、一番問題になりそうなのは「いつゲームが終わるか、どうやって終わるか、または【どうやって終わらせるか】」を考えずにプレイしている人がいる点かなという気がします。
この点は後で議論するとして、まずは基本であるお金の稼ぎ方について考えてみたいと思います。
ゲームに勝つためにはお金を稼ぐ必要があり、そのための方法論の基礎としては「株価が安い時に買って、高い時に売る」となるかと思います。
この方法論としては、2つのパターンが考えられます。
一つが「デックの強化」、一つが「デックの偏り」になります。

各文明の初期デックは「農民7枚(価値:1金)、株券6枚、各文明固有のサプライ・カード2種類を各1枚」の合計15枚になりますが、ドミニオン的な用語に置き換えると「銅貨7枚、屋敷6枚、王国カード2枚」の15枚のデックになります(なんでもドミニオンに置き換えるなという、お叱りの声が飛んできそうですが)。
ドロー・カードが無ければ3ターンで初期のデック15枚は1周します。
この3ターンの間、毎ターンのサプライ・カード獲得時に、ドロー・カードや金貨にあたるカードを加えていけば、シャッフルが入った4ターン目以降の株価の期待値は、シャッフル前に比べてかなり高くなるでしょう。
強いカードを買っていったら(実際は1枚自動獲得ですが)シャッフル後にデックが強くなる(「デックの強化」)といのは、ドミニオン的にもわかりやすい話だと思います。
また株券を買うこと自体、ある意味圧縮(屋敷が1枚デックから抜けるのと一緒)となります。そのため人気文明は多くの人に株券を買われるため圧縮され、さらに2周目の株価が高くなることが期待され、それ故に更に人気となり買われる傾向があります。
逆に最初に人気の出なかった文明は、株券(屋敷)が大量に残っているが故に株価の期待値が低く、更に不人気となり買われない場合も出てきます。

もう一方の「デックの偏り」ですが、15枚の山札に銅貨(農民)が7枚含まれていれば、1ターンに引く5枚の中に含まれる銅貨は0〜5枚となります。
といっても、1ターン目に銅貨を5枚引けば、2ターン目と3ターン目に引く銅貨の枚数は合計2枚になります。
ドローなどのカードがなければ、2ターン目の5枚のカードが公開された時点で3ターン目に引くカードは簡単にカウンティングできる(その時点で「わかる」)ことになります。

ちなみに、ゲーム開始時のプレイヤーの所持金は15金となります。
最初にデックに加わるサプライ・カード2枚が財宝カードでなければ、一つの文明について1〜3ターン目までの3ターンで連続して株券を購入した場合の金額は13金(基本2金×3ターン+銅貨7枚)になります。サプライ・カードが2金までの財宝カードだったとしても、15金で購入できます。
これは「買うのは1枚まで」「売るのは1種類」という株券売買の制約から考えると、魅力的に思えます。3ターン目まで同一文明を買い続け、「資金が切れる&シャッフルが入ってデックが強化される」4ターン目に一気にその株をまとめて叩き売ることで大きな利益を狙えます。
ただし、1〜2ターン目に自分が既に株券を買っている文明(屋敷が2枚以上圧縮されている)は3ターン目に人気株になっている可能性が高くなります。そうすると、3ターン目のスタート・プレイヤーの位置によっては「自分の番になった時は売り切れている」可能性もあるので注意が必要となります。
また首尾よく3ターン連続で同一文明の株券を買えた場合でも、4ターン目の引きが悪かった場合(たまたまお金がデックの下の方に固まっていて株価が低かった場合など)、お金がほとんど残っていないけど期待より安い株価で売るわけにもいかず、4ターン目の株券売買をパスしなければいけない危険があります。

デックの強化という話で言うと、「1周目のドロー・カード(の類)をプレイするか?」という問題があります。ドローした場合、3ターン目のカード公開の時点でシャッフルが入ります。
3ターン目であれば「今引けばシャッフルが入る」ことは明らかで、1〜2ターン目に安く買えていて3ターン目に売るつもりでなければ、プレイしない方がいい場合は多いでしょう。ドロー・カードをプレイすると、プレイされたドロー・カード自体や3ターン目に獲得するカードを含まない形でシャッフルされて、新しいデックが構成されます。
パスすれば次のカード公開時までシャッフルが発生しないので、そのドロー・カード自体や、3ターン目に獲得したカードも含んだ形で、4ターン目にシャッフルをした後にカードが公開されます。多分、こちらの方が4ターン目の株価の期待値はかなり高いでしょう。
1ターン目は必ず社長が不在(株券を誰も持っていないため)なのでアクション・カードが公開されてもパスされますが、2ターン目にドロー・カードが公開された場合も、同様のことを考える必要があります。2ターン目にドローした場合、3ターン目の公開の途中でシャッフルが入ることになり(3ターン目の獲得前に新しい山札ができる)、さらに言えば2ターン目の株価が高くなる可能性がある(銅貨を引く可能性が高い)と、あまり良くないことが多そうです。

パターンとしては4ターン目に最初の株の売却が行われる場合が多くなると思います。
銘柄がバラけることをいとわずに安いものを購入していない限り、4ターン目には新たな株券を買う資金が足りなくなっている上に、デックが2周目に入り株価が高くなっていることが期待できるからです。
4ターン目に株券を売った時点でゲームが終了するわけではないため、5ターン目には更なる利益を得るために新たな株券を購入することになると思います。この時に、再度「デックの偏り」が重要となります。
各文明のデックの内容を思い出して、今現在のその文明の株価が、今後の株価に比べて高いのか、安いのかを判断する必要があります。
勝敗を決める要素は「如何に稼ぐか?」になりますが、そのために必要なのは「高く売る」のではなく、「利益を大きく上げるか(買値と売価の差額を大きくする、さらに言えば、複数枚買って差額を大きくして売る)」になります。売価が高くなくても、非常に安く買えていれば勝ちにつながります。また差額が同じなら、少ない所持金で複数枚購入できる(買値が低い)方が有利になります。
特に初回プレイの場合は、この2回目(2周目)の売買のところでついた差が勝敗につながることが多いように思います。
そして、2回目の売買を成功させるためには、各文明のデックをカウンティングしている必要があります。

最後に初めてプレイする場合、一番問題になりそうなの「いつゲームが終わるか、どうやって終わるか、または【どうやって終わらせるか】」を考えているかという点につい考えてみます。
このゲームは「サプライが2つ山切れしたら」終了トリガーが引かれます。
社長がいなくても各文明には自動獲得カードがあるので、ドミニオンと違い、いつかはゲームの終了が訪れます。とはいえ、参加プレイヤーの意思で、かなり終了タイミングは引き延ばすことができます。
また、このゲームは各プレイヤーの所持金と株券は公開情報なので、現状、誰が勝っているのか(有利なのか)はだいたい推測できます。
※今回考察から除外している終了時勝利点のあるカードがある場合、点数(最終のお金)換算が難しいことがありますが、そうでない場合、それこそ株券を全て叩き売った直後のプレイヤーの所持金なんかは、確定で把握できる情報となります。

次のターンに自分が所持している株券1種類を売却して逆転できるのならそうすべきですが、そうでないのであれば、終了トリガーを引くようなカードの獲得は避けないといけないことになります。
特にトップが「全ての株券を叩き売って」トップに立った状況の場合、トップはどこの社長でもない(サプライを切らすための獲得ができない)ため、残りのプレイヤーが共謀すれば2ターン以上の時間は稼げます。
更に逆算していけば、自分が勝っていない時は、ドミニオンと同様で山切れ(3山切れでなく2山切れですが)を誘発するような獲得は避けた方が良いということになります。
初回プレイの人のプレイを見ていると、あんまりその辺考えずに「取りあえず自分が株を持っている文明を強化するカードの獲得しかしていない(それが山切れを引き起こすとしても)」のが、問題かなぁと感じるところがありました。

あと、よく聞く感想として「初期デック15枚が多いのでは」というのがありました。
最初にデックが一回りするのに3ターンかかるのが(デックを強化した結果が得られるのが4ターン目以降)、時間がかかりすぎるというもので、ドミニオン(10枚)に慣れすぎているというべきかもしれません。
ただ、ある程度株券の枚数がないと、そこに参入できるプレイヤー人数を制限しすぎるという話があり、初期デックから含まれるサプライ・カードがないと文明間の差がなさすぎるという話もあるので、少しバランスをいじって12枚(6/4/2枚)で1ターンの公開枚数を6枚にするとか、公開枚数は5枚のままで、更に展開を多様にするために3ターン目に「底」が出るようにするという案もありました。
まぁ、素人考えで下手にいじるのもあれですが、少し変えたバランスで一度遊んでみても良いかもしれません。

あんまりまとまりがありませんが、面白いゲームで、プレイ時間もそれほどは長くないですし、ドミニオンが好きな人は1回はやってみて損はないかなと思います。
ではでは。