突っ込む勇気

特に+購入や追加獲得のないサプライの2人戦では良くありがちな展開ですが、「残り属州が2枚になった時点で、残り2枚の属州に手が出せなくなる(手を出しづらくなる)」ことがあります。

2人戦の場合サプライに準備される属州は8枚になりますが、互いに属州3枚を購入してサプライの残り属州が2枚の状況を考えてみましょう。
この時にプレイヤーAは圧縮ですべての屋敷を廃棄していたのに対して、プレイヤーBは圧縮出来なかった屋敷が1枚残っていたとします。
すると現在の点数状況は、

プレイヤーA:18点(属州×3)
プレイヤーB:19点(属州×3+屋敷×1)
※サプライの残り属州2枚

となります。
この状況でプレイヤーAのターンに8金出たとして、プレイヤーAが最後から2枚目の属州を購入したらどうなるでしょうか?
返しのプレイヤーBのターンに最後の属州を購入されると、1点差(24点 対 25点)で、プレイヤーAの負けでゲームが終了します。
そのため、返しの相手のターンに「相手が8金でない」という見込みが持てない限り、なかなか最後から2枚目の属州を買うという決断をしづらいものがあります。ここで属州ではなく公領を買って相手にターンを渡せば(21点 対 19点)、相手も同様の状態になってゲームが続くからです。
少なくとも最後から2枚目の属州を買った場合のように、「返しの相手のターンに即死」はありません。

公領を買ってプレイヤーBのターンになった場合(21点 対 19点)はプレイヤーAの場合と同様に、「プレイヤーBが最後から2枚目の属州を買う→返しのターンに最後の属州を買えればプレイヤーAの勝利」となります。
そのため、プレイヤーBも(プレイヤーAに属州が買えないという見込みが持てない限り)8金あっても公領を買ってターンを返すことになり、なかなか残り2枚の属州を買えない状態が続くことになります。

(属州でなく)公領を買った場合(21点 対 19点)、プレイヤーAとしては返しのプレイヤーBのターンに
プレイヤーBが公領を買えずに屋敷購入(21点 対 20点)
という結果を期待することになります。
ターン開始時の時点で既に点数で勝っている場合(後手番なら同点でも可)、自分が最後から2枚目の属州を購入しても(属州の残りを1枚にしても)、返しのターンに対戦相手は最後の属州を買えない(買うと、自分の負けでゲームが終了するため)ことになります。そのため、対戦相手は公領を購入することになります。
更に次の自分のターンに最後の属州を買えれば自分の勝利でゲームが終了しますし、属州を買えなくても公領を購入出来れば、この状態を維持することが出来ます。

このように属州の残り枚数が2枚になると、属州を買えても公領を買う展開がしばらく続くことがあります。
ただ、ここで忘れてはいけないのは、「(残り属州2枚で、勝利点1点負けている状態で)属州でなく公領を買う」ということは、「即死(次のターンに負ける)」のリスクを避け、将来的に自分が有利なポジションを取れる時までゲームを引き延ばしにする代わりに、「いま属州を買って突っ込めば勝てた」可能性を捨てることになります。
どうしても「即死」を恐れて公領を買ってゲームを引き延ばしがちですが、常に「公領を買ってゲームを引き延ばす」ことが正しいとは限りません。
最近の対戦でその典型例があったのでご紹介します。


秘密の部屋、密輸人、坑道、倉庫、錬金術師、農村、記念碑、義賊、パン屋、交易場
属州・屋敷場

Log

「パン屋あり、交易場あり」のサプライなので、かなり早い展開が予想されますが、2人戦で錬金術師を無視するのも怖いものがあります。中盤には「ポーション+8金」みたいなお金が出るようになりますが+購入がなく、どこでデック構築を切り上げるかの判断(もったいないけど更に錬金術師などを買ってデック構築を続けるのか、後で息切れする危険を犯して属州を買い始めるのか)が難しいサプライのように思います。
私は後手番だったので、「ある程度先手番の動きに併せてプレイすればいいか」くらいの考えでスタートしました。

対戦相手の初手は4-3からコイントークンを使って「交易場−倉庫」。
私の方は初手5-2でしたが、コイントークンを温存しての「交易場−パス(秘密の部屋)」は微妙なのでコイントークンを使うことにし、ハイリスク・ハイリータンで密輸人(交易場−密輸人)も考えましたが、安全性をとって先手番と同じ「交易場−倉庫」を選びました。
サプライを見てこの後ポイントになりそうに思ったのが、まず錬金術師を取るかどうかで、他に密輸人、記念碑、「倉庫−坑道」あたりが目に付きました。

互いに3ターン目に無事交易場をプレイしてポーションを加え、4〜7ターンの4ターンで先手番は「錬金術師×2、パン屋×2」をデックに加え、私の方は「錬金術師×3、坑道」を加えて、8ターン目より先手番が属州を買い始めました。
出来れば展開が拮抗した際に点数状況の打開を期待出来る記念碑や密輸人(公領密輸)を入れておきたかったのですが、何となく「交易場と被ったら嫌だな」と思いました。そうなると被ってもいいように更に農村まで入れるか、交易場でプレイするカードが無い状態になる(交易場がお役目御免になる)まで待つ必要があって、そこまで手間をかける時間もなさそうだったので、とりあえず既にある倉庫だけで起動できる坑道を足してみました。
その時の目論見としては、結構すぐに対戦相手が顔を上げる(お金が途切れて属州などが買えない)ターンが来るだろうから、そのタイミングで記念碑などを入れるかどうか考えればいいか、とか思っていました。
結論から言うと、対戦相手は顔を上げることなく走り抜けました。互いにポーション1枚で、対戦相手は錬金術師2、パン屋2、倉庫1に対し、私は錬金術師3、倉庫1(+坑道1)なので、対戦相手の方が先にポーションが途切れて錬金術師が戻らなくなり一度顔を上げるのではないかと思っていたのですが、先にポーションが途切れて苦しくなったのは私の方でした。
それでも圧縮が効いているおかげで8〜10ターン目は互いに毎ターン属州を購入して(属州3枚ずつ)、その後11〜14ターン目は互いに毎ターン公領を購入して公領を4枚ずつを分けあいました。
私の方は13ターン(公領3枚目)までは毎ターン8金以上出ていましたが、公領購入の最後の4枚目の時点でかなりキツくなっていました(公領3枚目を買った直後の13ターン目終了時に引いた手札は、坑道・公領・ポーション・交易場の4枚で、そこで山札が尽き、シャッフル後に5枚目として錬金術師を引いたので首がつながった)。

対戦相手もポーション錬金術師)は途切れるようになってきますが、それまでに十分にデックが回転したため、パン屋で取ったコイントークンが10枚以上溜まっています。そのため属州を買うと決めれば、ほぼ確実に2ターン連続で購入可能な状態です。
この状態で対戦相手をとどめていたのは、実は足を引っ張っているように見える私の方の「坑道」購入でした。
デックの回転に寄与せず、逆に獲得した金貨分デックを厚くしてデックの動作を不安定にしていますが、(買った時には期待していなかったことですが)「勝利点2点」があるため(対戦相手のターン開始時の勝利点は私の方が勝利点合計で高い状態になっていたため)「最後から2枚目の属州を買うと、即死する(返しのターンに私が最後の属州を買うと負ける)可能性がある」状態のため、対戦相手が4枚目(最後から2枚目)の属州を買えなくなっていたのです。
実際、対戦相手が公領の1〜3枚目を購入した際に、代わりに4枚目の属州を購入した場合(最後から2枚目の属州を購入した場合)、私は最後の属州を購入出来た(即死していた)ので、その時点では正しい判断だったことになります。
ただし、公領を4枚ずつ分けたあたりで、対戦相手は「決断するべきだった」(突っ込む勇気を持つべきだった)という話になります。

属州3枚、公領4枚(+私の方は坑道1枚)を分け合った時点で、私のデックの方はかなりフラフラで、その後は売り切れた公領に代わって坑道購入レースに移るわけですが、実は坑道購入にギリギリな3金しか出ていないターンもあります。
実は、そのタイミングで対戦相手が最後から2枚目の属州を買い始めると、私は負けていました。
対戦相手は2ターン連続で属州を買えるコイントークンの蓄えがあり、その間の私のターンに、私は属州を買えないことが確定しています。
ただし自分の手札を見ている私にはわかりますが、(対戦相手である私の手札を見ることの出来ない)対戦相手にはわかりません。
かなり胃の痛い思いをしながら対戦相手のターンが過ぎるのを待つことになるのですが、結局、対戦相手が属州に手を伸ばすことはありませんでした。

そして公領が売り切れて坑道購入レースになったために、実は私のターン開始時の勝利点は対戦相手と同点になります(事前に坑道1枚を買っていたため/公領購入レースの際は、相手が1点上回った状態だった)。
また私のデックは偏りがあって不安定ですが、金貨がそれなりに入っているので8金出るターンもあります。
この状態なら、私は最後から2枚目の属州を購入しても問題なくなりました。返しに対戦相手が最後の属州を購入したとしても同点にしかならず、先手番のターンでゲームが終了して同点なら、先手番の負け、後手番の私の勝利になります。
更に次の自分のターンに最後の属州を買えなくても、対戦相手の購入にあわせた勝利点を購入出来れば、この状態を維持できます。

坑道を3枚ずつ購入した17ターン目に私の方で8金出たので4枚目の属州を購入し、その後、残り2枚の坑道を分け合ったあたりで勝敗が見えてきます。
私の方はどこかで8金出れば(最後の属州を購入出来れば)勝ちだし、次の購入レース対象である屋敷が切れても3山切れで勝ちになります。負けるとしたら、屋敷が切れる前に私に2金出ない(屋敷が買えない)ターンがあった場合で、かなり確率の低い話になります。
実際、すぐに私に8金出てゲームは私の勝利で終了になります。

振り返ってみると、対戦相手は公領が売り切れた後の15〜16ターン(実際には公領4枚目の14ターンも含む)に最後から2枚目の属州を買っていれば勝っていたところを、「返しのターンの即死」(返しのターンに相手に最後の属州を買われて、負けでゲームが終わる)を恐れてゲームを引き延ばしたために、逆に敗北したことになります。
とはいえ、いつでも突っ込めばいいわけではなく、上記の例でも、もっと前のターン、例えば属州3枚買った次のターンに公領を買わずに勇気を出して4枚目の属州を「えいやっ」と買っていれば、それこそ「バカめ」と言われながら返しに最後の属州を買われて即死していたわけで、それは正に蛮勇と呼ばれる行為となります。

結局のところ、相手のデック状態を考え(例えばシャッフル直後に対戦相手が2ターン連続で属州を買ったら「さすがに、あのデックにもう一ターン連続で属州を買う金量はないだろう」とか)、今後の自分のデックの状態を考え、それぞれのリスクを比較した上で(例えば「返しに属州買われたら即死だけど、公領購入レースまで引き延ばすとデック内容的に自分の方が先に顔を上げそうだし、対戦相手も属州買えない確率高いから突っ込んでみる」とか、「引揚水夫を引けば何とかなるから耐える/引揚水夫を引かれたら逆転されるから突っ込む」とか)、必要と思えば突っ込む(最後から2枚目の属州を買う)勇気も必要と言えるでしょう。

突っ込まない方が突っ込むよりも将来的なリスクが高い(勝率が高い)と判断して突っ込んでみたら、返しのターンに敢え無く即死することもあります
実際、上記の例で坑道購入レースに入った時点でも私のデックには十分8金出る可能性があったわけで、対戦相手が突っ込まなかった15ターンや16ターンに突っ込んでみたら(最後から2枚目の属州を購入してみたら)、返しのターンに即死していた可能性があることは否定できません。ただ、明らかに引き延ばした場合の方が負けにつながるリスクが高いように思います。
結局のところ、突っ込んだ方が勝率が高いか、我慢した方が勝率が高いのかという話で、(自分の目から見て)勝率の高い方を選んだのに結果論的には負けることもあります(そもそも既に勝つ道筋がなく、どちらを選んでも負ける場合もあります)。
ただ、その場合は「(考えた上なので)仕方なかった」(自分的にはベストを尽くした)とあきらめもつくでしょう。

ではでは。