【書評】ドミニオンへの招待2012

ドミニオンへの招待2012」を購入しました。
一通り読んでみた感想としては、それなりにいいことが書いてあって、前回よりも良い内容に仕上がっているように感じます。

ただ、こういう商品の販売層(販売数)とか、利益の構造はなんとなくわかるので、この価格(1,680円)設定はわかりますが、それでもドミニオン普及のために、値段は1,000円とかにならんもんかなという気はしました(面倒だけど、囲郭村を購入者で応募した人に700円で販売とかいった形にするとかして)。
まぁ、それって、普及のためにメーカーに自腹を切れ(とまではいいませんが、利益を削れ)という話になるし、その割に、1,000円くらいに値段を下げても爆発的に普及するわけでもないしと、まぁ、難しい話というのはわかってはいますが。
単に、それをわかった上で、メーカーに男気を見せてほしいというだけの勝手な願望なわけですが。

さて、本の内容に入っていくと、メインは基本〜異郷(+プロモ)の全王国カード(最新プロモのGovernorは除く)の解説(レビュー)となります。
今回は枚数が多いせいもあって、前回と違いレビューアーは1人となっています。そのせいもあってか、ほとんどのカードのレビューは上手くまとめてあります。
ただ、たまに「ん?」と思うものもあるので、その点に突っ込んでいってみようかなと。
まぁ、紙面は限られていて、その狭い範囲内に言いたいことを上手く表現するのは難しいし、ある程度面白い(豆知識的な)話を書かなければいけないし、そもそも記述すべきカードの数が多いし、自分が書いたレビューも似たようなモノだし(紙面の制約なしで書いているので、さらにひどいのも多いし)と、まぁ、理解すべき(同情すべき)点は多々ありますが、まぁ、突っ込む際にはその辺は置いておいて。
読者目線は常に傲慢ということで。

【基本セット、陰謀、海辺】
さすがにこの辺りのレビューに関しては、あまり突っ込むところがないですね。

・庭園(20p)
庭園プレイで「庭園を分け合う展開は望ましくない」と書いてありますが、サプライによっては、複数人の庭園プレイで速攻3山切れの方が、1人で庭園プレイするより(人数比を考えても)庭園側の勝率が高い場合は十分あるような。

・役人(22p)
「ゲームが長引くような泥仕合では強い」とありますが、別にそういう場でなくても(普通のサプライの場合でも)、初手に購入して、そこからお金プレイしてもそこまで悪くなく、十分使える場合は多いような気がします。

・漁村(42p)
ワンポイント・アドバイスの記述で、漁村などの持続カードが前のターンから持続している場合の記述があります。
ここで例に挙げられている共謀者の場合は「このターンに」と書かれているので、前のターンから持続中のカードは数えないので、ここでの書き方であっていますが、行商人などは前のターンから持続中のカードも場にあれば数えます。その辺の説明がないと、誤解を与えかねない表現かなと思います。

・航海士(46p)
私も「航海士+借金」などのコンボは言及していたのでヒトのことは言えませんが、私は航海士単体でも、それなりに使えるカードと考えています。
で、借金などがあると、さらに使いやすくなると主張しているわけで、それらのカードがなければ「航海士は使えない」と考えているわけではありません。
この書き方だと、航海士単体は“使えない”カードと書かれているように捉えられかねません(というより、そう書いているのかもしれませんが)。

錬金術
・念視の泉(55p)
私も念視の泉は嫌いではないですが、そこまで持ち上げるカードかなという気がします。
「圧縮⇒山札が、ほぼアクションだけになって引き切り」とかできると確かに楽しいですが、そこまで状況が整えば同様に強いカードは結構あるような気がします。
錬金術でも、ゴーレムとか錬金術師とか。
少なくとも状況がかなり整っていなければ、念視の泉がポツンとサプライにあっても、私はそっちにはいかないような気がします。

・使い魔(57p)
「歴代最速の呪い撒きカード」という煽り文句は、異郷まで含む(つまりIGGまで含む)解説では不適切な気がします。
で、IGGがなかったとしても、ポーションを買うために一度迂回するため、やっぱり歴代最速という文句は違うような気がします(場が整った中盤に呪いが尽きるスピードが異様に早く感じる、2枚以上使っても魔女のようなドロー損がない分だけ期待値的に少し早い、ということであれば、納得しないわけでもないですが)。

錬金術師(57p)
錬金術師を運用する場合、薬草商がサプライにあれば、どこかで1枚デックに加えるのは良いアイデアだと思います。
ただし、さすがに「P+3」コストの錬金術師を目指す場合に、初手「P−薬草商」を推奨するのはどうかと思います(5-2で仕方ない時とか、目標がP+2の大学とかならともかく)。

・支配(58p)
『「支配」が出たサプライではデックを強く作りすぎない謎の流れになることが多い』というのは、さすがに言い過ぎでは。
一部デックに投入しにくいカードがあるのは確かですが。

【繁栄】
・会計所(63p)
会計所に関わらず、全般的にIGG関連の記述でおかしなところが多いような気がします。
局所的に考えるとIGGと会計所は相性が良さそうに思えますが、いざIGG場で、「5金あるのにIGGを買わない」「(IGGが尽きて、2山切れた状態で)5金あるのに公領を買わない」で会計所を買う、というタイミングはあまりないような気がします。
負けているときに、一発逆転で属州(植民地)を狙う時くらいでしょうか。

【収穫祭】
・占い師(73p)
序盤から屋敷を圧縮できる環境での占い師の投入は、敵に利すると考えた方がいいような気がします。感覚的には、初手に再建買っている人がいる前で初手に占い師を買うのは、書庫買っている人がいるのに民兵を買うのに近いような気がします。
圧縮の方法が見張りとか、改良の場合も、さらに悪化するような。

【異郷】
・義賊(83p)
2ターン目の4番手が、銀貨を狙って義賊を買うことが推奨されていますが、確率的に考えると微妙な選択のように思います。
例えば、「3ターン目に確実に手札に引けることがわかっていたら、初手に泥棒を買いますか?」といわれると、かなり限られた一部の場を除いて、「買わない」という返答になると思います(2ターン目義賊の場合、それよりは少し状況がいいですが)。

・交易人(83p)
IGGが相性のいいカードとして挙げられていますが、微妙な気が。確かにIGGと交易人の両者が揃うと、いろいろ悪さできそうです。
が、IGGが場にあれば、他のプレイヤーも交易人を買って、そうなるとIGGを買うタイミングはあまりなく(序盤に交易人が買われる前に牽制で買われるくらい)、そうなると、IGGと交易人が運よく手札に揃うことは少ないような気がします。

ちなみに、IGGを使用してその効果で銅貨を獲得し、その際にリアクションで交易人を見せて銅貨の代わりに銀貨をもらうことは可能ですが、その場合、獲得した銀貨は捨札置き場に置かれます(銅貨のように手札に入りません)。そのため、このターンの購入にIGG自体は1コイン分しか寄与せず、結構微妙なことが多いです。

・香辛料商人(84p)
香辛料商人自体は序盤テンポが良くて使いやすいですが、本質的には「借金」に近く、購買力的には銅貨相当な点には注意が必要と思われます。

・街道(86p)
「宮廷+街道は何もしない」と書いてありますが、「コスト-1」の効果が3倍の「-3」にならないだけで、コスト-1、+3アクション、+3ドローがつくことを考えると、十分、何かはやっていると思います。

・大使館(87p)
大使館の場合、村と組み合わせて引き切り系を作るより、単なるステロイドの方が速い場合が多いように思います。
その辺は、鍛冶屋ステロイドと、鍛冶村の関係と似ているような気がします。
あと、掘り進めるのは得意ですが、引ききるのは結構苦手なところがあります。

・IGG(89p)
IGG戦でIGGを使う側の立場で考えると、基本的には、IGGが尽きた後は、紛れが起こる前にサクッとゲームを終わらせたいのが実際です。
具体的に言うと、その後はさっさと公領を切らす方向に動きます。

確かに局地的にみるとIGGと庭園は相性がよさそうに見えますが、IGG戦でサプライに庭園があると、IGGが切れた後の勝利点レースで、公領と庭園の二つのターゲットが存在することになります。

通常なら、負けているプレイヤーも「自分が公領を買うとゲームの終わりが近づくけど、屋敷を買ったり、属州を目指しても追いつかないので、しょうがなく」(2位、3位争いの関係もあって)公領を買い、さらにゲームの終了が近づくという悪循環に陥ります。
で、庭園が場にあると、「公領、もしくは庭園のうち、トップ・プレイヤーが買わない方」を買うことで、終了までの時間をあまり縮めずに、勝利点レースで追いかけることが出来ます。その分、終了までの時間が伸び、何らかの紛れが生じる可能性も増えます(例えば、負けているプレイヤーの一人が勝利点を購入をせずに属州購入のためにデックを強化して、最終的に追いついてしまうとか)。
そう考えると、IGGを十全に使える場を考えると、庭園はない方がよさそうという結論になると思います。

とりあえず以上で。